１．原油市況～ハリケーンを材料に高値更新

ＷＴＩ原油価格（期近、終値ベース）は、8月初めは製油所事故やサウジアラビア国王の死去などを材料に上値を追っていた。8月半ば以降も、エクアドルでの抗議行動による生産障害、ヨルダンでの米軍へのロケット攻撃、イラクでの電力障害などが原油供給への懸念を強めたことに加え、24日にはハリケーン「カトリーナ」が進路によっては米国の石油生産設備に影響を与えることが懸念された。25日の終値は67.49ドルと高値を更新している。同日発表の週次在庫統計は、原油在庫の増加や稼働率の低下を示しており、原油価格を押し上げる材料ではなく、26日にはハリケーンがフロリダ州に上陸し、製油所への影響は少ないとの見方が広がり原油相場は下落したが、その後、ハリケーンがメキシコ湾岸に再上陸し、製油所の操業に影響がでている。

２．トピック～原油高と各国経済への影響について

1980年時点に比べエネルギー効率が改善し、経済全体の原油依存度が低下している。ここでは100万ドルのＧＤＰ(2000年価格)を産出するのに必要な原油量（＝以下、原油原単位）を計算すると、欧米先進国や日本・台湾は1980年時点に比べ6割前後の水準に低下してきている。また、原油原単位の絶対水準をみると、日本は386バレルと米国の695バレルの半分強にとどまっており、先進国の中で最も低い部類に属する。なお中国は1501バレルであり、日本：米国：中国は約1：２：４である。

原油原単位の大きさは、原油価格が急上昇した場合のエネルギー関連の物価上昇やそれらが他分野に波及していくために起こる経済の混乱の大きさを推察する手だてとなる。日本は、原油の急騰によって経済が混乱するという意味でのマイナス影響の度合いは小さいと推察される。

また、日本は原油の純輸入国である。原油輸入に対する対価が上昇する分は、海外への所得が流出していく。しかし、この度合いも、現在の原油・石油製品の貿易関係からすると、他の先進国と同程度である。ＧＤＰ100万ドルあたりの原油の純輸入量をみると、米国、欧州、日本はそれぞれ403バレル、423バレル、374バレルと大きな差はなく、むしろ日本は小さい。現在の原油消費や貿易関係からすると、日本への原油高の影響は、他の先進国に比べ大きいとはいえない。

原油レポート No.62 原油高と各国経済への影響について

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