１．原油市況～先進国の協調石油備蓄放出で相場は軟化

ハリケーン「カトリーナ」の影響を懸念して一時70ドルを上回って取引された原油価格（ＷＴＩ期近物）は、ＩＥＡ(国際エネルギー機関)によって先進国の石油備蓄を放出する対策が講じられたことを受けて下落に転じた。また、ハリケーンで操業が止まっていた油田や製油所の復旧が徐々に進んでいることやガソリンなど製品価格の高騰によって需要が抑制されるとの見方が増えていることも相場の押し下げ要因になっている。12日のＷＴＩは63.34ドルで引けている。

なお、昨年のハリケーン「アイバン」によって、昨年9月から今年2月にかけての半年間で4384万バレルの製油生産が損なわれたが、今回の被害はそれを上回ると見られている。ただし、ＩＥＡによる石油備蓄放出は日量200万バレル規模を30日継続することとしており、1ヶ月で合計6000万バレルの供給は、十分な大きさと思われる。

２．トピック～原油高と各国経済への影響について～その２

原油依存度は、100億円の名目ＧＤＰを産出するのに何億円の金額の原油を投入したかを計算したものである。日本経済の原油依存度は、1980年の6.0％から1998年には0.7％にまで低下したのち上昇に転じたものの、2004年には1.7％にとどまっている。2005年も原油価格の上昇が続いているため、原油依存度は上昇するが、それでも2％弱と1980年の3分の１以下とみられる。

原油依存度は、経済活動に占める原油の占める割合を表わしており、短期的に原油価格が上昇したような場合に、経済にどれだけ負荷がかかるかを表わしていると考えられる。他の先進国をみると、必ずしも日本ほど原油依存度の水準が低いわけではないが、それでも原油依存度は大幅に低下しており、原油が急上昇した場合に経済が被るショックは1980年代に比べ格段に小さいことが推察できる。

しかし、開発途上国の中では、工業化の推進などにより、原油依存度が高まっている国があり、こうした国では、原油価格上昇の悪影響は、先進国に比べて大きくなると思われる。実際、インドネシアやフィリピンでは原油高の悪影響が表面化してきている。また、タイや中国でも、原油依存度が1980年に近い水準に上昇してきている。

原油レポート No.63 原油高と各国経済への影響について～その２

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