１．原油市況～先進国の石油備蓄放出で相場は軟化地合い

ハリケーン「リタ」による石油関連設備への大きな打撃は回避されたようである。これを受けて、原油価格（ＷＴＩ期近物）は、23日に1バレル64.19ドルにまで低下し、さらに25日の時間外取引では一時62ドル台にまで低下した。

ハリケーン「カトリーナ」の被害に「リタ」の被害が加わることになり、米国の石油生産や石油精製は平常時よりも落ち込んだ状態が続くが、ＩＥＡによる石油備蓄放出策などにより、当面の原油供給への懸念は生じないと思われる。

原油、ガソリン、暖房油ともに「リタ」を懸念して上昇したが、進路などから被害がさほど大きくなさそうであるとの見方があり、「カトリーナ」の時ほどの急騰にはならなかった。

２．トピック～天然ガス価格の上昇について

天然ガスの価格は、ハリケーン「カトリーナ」が米国に被害をもたらした8月末頃から高止まり傾向で推移している。天然ガスは、窒素酸化物や硫黄酸化物の発生を抑制することが容易であり、かつ熱量あたりの二酸化炭素の発生も少なく、環境負荷の少ないクリーンエネルギーという特徴がある。2003年時点の各エネルギー源のシェアを見ると、石油が38.1％、石炭が24.0％、天然ガスが23.6％、水力が6.5％、原子力が6.4％であり、天然ガスは石炭に匹敵するエネルギー源になってきている。

長い目で見ると、天然ガスは有力な代替エネルギー源である訳だが、発電施設の中には石油と天然ガスの双方が使用できるものもあり、短期的にもある程度の代替性が存在している。エネルギー源としての代替性があることを背景に、原油と天然ガスの市況はかなりの連動性をもっている。また、天然ガスと原油との相対価格（＝天然ガス価格÷原油価格）をみると、クリーンエネルギーとして原油よりも選好されることなどを背景に、長期的には天然ガスの相対価格が上昇する傾向がある。

しかし、足元の天然ガス相場は、ハリケーン要因で一時的に押し上げられているとみられる。暖房需要が増加して市況が高止まりしやすい冬場を越せば、ハリケーンに被災した天然ガス生産施設の復旧を受けて、天然ガス価格には下落圧力がかかることになろう。先物市場でも、天然ガス相場には先安感が出ている。

原油レポート No.64 天然ガス価格の上昇について

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