１．原油市況～石油製品高による需要鈍化を受け、先高感が弱まる

原油価格（ＷＴＩ期近物、終値）は、徐々に落ち着きを取り戻し、10月6日～10日の間、1バレル61ドル台で安定していた。ＩＥＡ(国際エネルギー機関)の月報やＦＯＭＣの議事録の内容を受けて需要増加期待が強まり、12日には64.12ドルに上昇したが、その後、ガソリンや暖房油など製品価格高止まりによる需要減退懸念などから再び値を下げた。17日に始まる週になるとハリケーン「ウィルマ」の進路が懸念され64ドル台に戻す局面もあったが、その後、ハリケーンの進路がメキシコ湾岸地区からそれるとの見方が強まり、一時59ドル台まで下落した。

夏場に比べて市場の先高感は弱まってきており、17～20日にかけての先物カーブは、期先高(コンタンゴ)の状態ではなくなっていた。直近（10月21日時点）の先物カーブを見ると、価格のピークは2006年5月物～6月物と先高感が残っているが、ハリケーンなど一時的材料により押し上げられた分が剥落することや足元の需要鈍化を織り込んで、原油市況は軟化している。

２．トピック～中国･インドの石油事情と石油備蓄計画

中国のエネルギー自給率は94％と高い。これは国内生産量が多い石炭が中国のエネルギー源の主力になっているからである。原油に限ってみると、自給率は60％であり40％は輸入に依存している。国内の原油消費は増加が続き、輸入はさらに拡大することが見込まれる中で、中国の国営石油企業は、積極的に海外投資を行っている。

急速に原油の海外依存度が高まる中で、中国は石油緊急備蓄の制度を整えようとしている。インドも同様な事情から、国家備蓄の設立に着手している。2008年までに、中国で1400万トン、インドで500万トンの石油緊急備蓄が行われる見込みである。

さらに、米国のハリケーン被災に対応して、取り崩された先進国の備蓄も、今後、再充填されるはずである。中国、インドの国家備蓄に加えて、放出した先進国備蓄の再充填が3年間で行われると仮定すると、原油の所要量は約1.8億バレルであり、日量に換算すれば16万バレル程度である。これは、それほど大きな需要増とはいえず、原油相場への影響は限定的であろう。

原油レポート No.66 中国･インドの石油事情と石油備蓄計画

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