１．原油市況～気温上昇観測から反落

原油相場（ＷＴＩ、期近物、終値）は、米国北東部の気温低下により暖房油需要が増加するとの見方から12月14日には61.37ドルまで上昇した。しかし、その後は、米国中部の上空に暖かい空気が流れ込み、それが北東部に移動してくるとの観測から12月16日には58.06ドルまで下落した。原油相場は、気象情報に左右される状態が続いている。その間、12月14日に発表された米国週次統計では、気温低下にもかかわらず暖房油を含む中間溜分の在庫が前週とほぼ同じ水準を保ったこと、クリスマス前の休暇シーズンにもかかわらずガソリン在庫が増えたこと、製油量が増えているなかでも原油在庫が増加していることなど、原油や石油製品の供給が十分であることを示す内容であった。

２．トピック～先高観測が強まる原油先物市場

先物カーブの形状を見ると、期先物が期近物よりも高い傾向、つまり原油が先行き上昇していくという観測が強まってきている。

たとえば、直近（12月16日時点）の先物カーブを見ると、価格のピークは2007年4月物～5月物になっている。夏場以降の先物カーブの変遷を振り返ってみると、今年の夏場からハリケーンによる被害が出た頃までは今冬つまり「半年先」あたりが価格のピークであった。しかし、需要減退懸念により原油価格が下落してきた10月から11月にかけて、価格のピークは来期の冬場あたり、つまり「1年先」程度に移っていく。12月に入ると、価格のピークは、さらに「1年半先」の2007年夏場頃に移ってきている。

このことは、期近物を押し上げていた短期的な要因が剥落してくるとともに、中長期的な要因に基づく価格形成が表面に現れてくることにより起こっている。ガソリンや暖房油など製品の価格高と原油供給の障害といった短期的な要因が剥落し、①米国や中国を中心とした先行きの需要の増加観測や②ＯＰＥＣの生産余力が乏しいという中長期的要因によって、期先高の期待が形成されている。原油先物市場には、需要の増加が供給力の増加に追いつかずに、将来、需給が逼迫していく懸念があるということである。

原油レポート No.70 先高観測が強まる原油先物市場

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