１．原油市況～ 2カ月半ぶりの高値に上昇

原油相場（ＷＴＩ）は、2カ月半ぶりの高値に上昇している。1月に入り、ロシアとウクライナの間での天然ガス価格の交渉難航により、ロシアからのエネルギー供給に対する不安感が強まり、原油価格も上昇した。また、イスラエルのシャロン首相の容体悪化により、中東の政治情勢が不安定化するとの懸念も、原油価格の上昇要因になり、原油価格（ＷＴＩ、期近物）は64ドル台にまで上昇した。その後、米北東部の気温が高めに推移するとの気象情報を受けて、9日の終わり値は63.50ドルに下落したが、年末の61ドル台に比べると上昇している。

２．トピック～原油価格の上限・下限の目安

原油価格の上限および下限の目安について考えてみたい。

原油は、短期的に需要や供給の量が変化しにくいため、価格変動が大きくなるとされる。しかし、数年以上の時間が経過すれば、代替エネルギーへの転換や省エネルギーによって原油需要が減少したり、油田開発が進んで原油の生産量が増えたりする可能性があることは、第1次・第2次石油危機後の経験のとおりである。逆に、原油価格が低迷すれば、油田開発や製油所への投資が出てこないのは、1980年代後半から最近に至るまでの経験である。

幅広にみると、1983年時点の原油依存度に並ぶ原油価格の水準を上限（上限価格A）、生産コスト割れとなる価格を下限（下限価格A）と考えることができる。また、代替エネルギーである天然ガスとの関係からも、上限、下限を考えることができる（上限価格B、下限価格B）。このようにして計算した上限価格Aは1バレル＝92ドル、上限価格Bは85ドルである。一方、下限価格Aは14ドル、下限価格B＝53ドルである。

現時点で原油価格が取り得る範囲は10ドル台半ば～90ドル台前半まで非常に幅広いといえる（上限価格Aと下限価格A）。しかし、最近1年の天然ガス価格を参考にしてみると、50ドル台前半～80ドル台半ばがその中心レンジとして考えられる。原油価格は高止まりあるいは、さらに上昇する可能性が高いと思われる。

原油レポート No.71 原油価格の上限・下限の目安

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