１．原油市況～イラン、ナイジェリア要因により一段と上昇

原油相場（ＷＴＩ）は、上昇が続いている。1月はじめには、ロシアとウクライナの間での天然ガス供給問題、イスラエル首相の容体悪化などが原油価格の上昇要因になった。その後は、ナイジェリアの武装勢力による石油設備への攻撃やイランの核問題を背景に相場の上昇が続いている。20日の原油価格（ＷＴＩ、期近物、終値）は68.35ドルと昨年9月1日以来の高値にまで上昇した。

実需面では、例年よりも暖房油などの在庫が潤沢でありが需給緩和要因であるが、一方で先進国や新興国の景気回復力が強まるとの観測が相場の上昇要因として意識されている。こうした中で、年初から地政学リスクやエネルギー資源国の強硬な外交姿勢を材料に、原油相場は高値をうかがう動きになっている。

２．トピック～貿易ルートで還流するオイル・マネー

原油価格の上昇は日本のような石油の輸入国にとっては輸入代金の支払い額の増加を意味し、経済のマイナス要因となるが、一方で石油輸出国は、石油収入の増加によって経済が潤っている。巨額の石油収入を元に、産油国では、インフラ投資や設備投資が活発化し、個人消費も好調である。こうした需要の多くは産油国内で自給できないため、産油国は輸入を増やすことになる。原油価格の上昇によって、巨額のオイル･マネーを産油国は手にするが、その一部は、資本財や消費財の輸入需要となって、工業国へ還流することになる。

原油価格の上昇による産油国の石油収入の増加は、産油国の輸入が増加することにより、他の国に還元されているともいえる。このルートによるオイル・マネーの還流は大きい。例えば、ＯＰＥＣの輸出金額は2002年頃に比べ約3000億ドル増えているが、輸入は、その半分の約1500億ドル増えている。

日本から産油国向けの輸出も増加している。過去の例をみると、原油価格の上昇にやや遅れる形で、日本の産油国向けの輸出が増加する傾向がある。原油価格は2005年に大幅上昇し、足元も高止まりしていることから判断すると、当面、産油国向けの輸出は好調に推移しそうである。

原油レポート No.72 貿易ルートで還流するオイル・マネー

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