１．原油市況～イラン、ナイジェリアへの懸念が後退

原油相場（ＷＴＩ）は上昇が一服している。背景には、1月31日にナイジェリア問題がひとまず収束の方向へ向かい、イラン問題も懸念された原油輸出の停止といった事態が回避される方向に動き出した（イラン側は、イランに対する制裁が検討されても、同国が原油輸出の停止によって国際社会に対抗することはないとした）ことがある。2月6日の原油価格（ＷＴＩ、期近物、終値）は65.11ドルと1月30日の68.35ドルに比べ低下している。

実需面では、これまで北米地域が暖冬気味に推移したため暖房需要が抑制されたことが需給緩和要因であるが、一方で先進国や新興国の景気回復力が強まるとの観測が相場の上昇要因として意識されてきた。こうした中で、年初から地政学リスクやエネルギー資源国の強硬な外交姿勢を材料に、原油相場は高値をうかがう動きになっていた。足元は、ナイジェリア情勢は人質解放などによりひとまず収束し、イランの原油輸出停止という事態も回避されたため、原油価格はやや落ち着いている。

２．トピック～イラン問題について

2月4日にＩＡＥＡ(国際原子力機関)緊急理事会は、イランの核開発問題を国連安全保障理事会に付託することが決まった。ただし。ＩＡＥＡ理事会により詳細な報告がある3月6日までは、安保理は制裁などの具体的な行動はとらないとされる。この間、ロシアを中心にイランとの妥協点を模索する動きが続けられるとみられる。

日本は、イラン原油への依存度が1割以上と他の主要国に比して高く、中国も原油輸入量の1割弱程度をイランに依存しているとみられる。また、イランは、原油だけではなく、天然ガス資源も豊富である。中長期的なエネルギー需給の逼迫が懸念されている状況下、国際的社会は経済制裁などの強硬措置には踏み切りにくいであろうという読みがイラン側にあるとされる。

ブッシュ大統領の「一般教書」演説をみると、その中でイランの現政権を名指しで批判するなど米国の姿勢は強硬との印象はぬぐえない。事態が、いつ、どんな風に展開するかは予断を許さないが、解決へ向かうシナリオが描きづらい状況である。

原油レポート No.73 イラン問題について

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