１．原油市況～高値圏で調整

原油相場（ＷＴＩ、期近物）は、4月21日にザラ場で1バレル＝75.35ドルの史上最高値（24日にも記録）を付けて以降は、調整気味に推移している。高値警戒感が強まっていたことに加えて、25日に米国が戦略石油備蓄への積み増しの一時停止を発表したこと、26日に発表された米国週間石油統計で製油所の稼働率が上昇したこと、5月3日に発表された米国週間石油統計ではガソリン在庫が9週間ぶりに増加したこと、などが原油相場の下落要因となった。

しかし、一方で、イランやナイジェリアを中心とした原油の供給懸念や、米国のガソリンの規格変更に伴うガソリン不足懸念は、根強く残っており、原油相場は下げにくい状況が続いている。こうした中、米国を中心とした世界景気の拡大やガソリン需要の増加が、原油相場の押し上げ材料となり易いであろう。

２．トピック～原油価格はどこまで上昇するか

過去の事例として、第2次石油危機の時には、原油の需給構造が大幅に変化する価格水準に達していたと考えられる。その後、1980年代には、原子力発電の開発や天然ガスの利用といったエネルギー源の多様化や省エネルギー技術の普及が急速に進む一方で、油田開発の増加により原油の供給力が増加した。

石油危機は産油国による一方的な価格引き上げであった。市場メカニズムで決まる現在の原油価格は、石油危機時の水準にまで上昇する可能性は小さいとみられる。

具体的には、米国経済において、原油影響度（＝原油消費金額÷名目ＧＤＰ）が1979年や1982年並になるような原油価格の水準が、原油価格の上限に相当すると考えられる。1980年並みに原油影響度が上がってしまう原油価格の水準は145ドルであるが、市場メカニズムで価格が決まっている現在は、事故や戦争などによって大規模な供給途絶が発生することでもない限り、そこまで上昇しないと思われる。100～102ドル程度が上限ではないか。

原油レポート No.79 原油価格はどこまで上昇するか

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