１．原油市況～調整局面が続く

原油相場（ＷＴＩ、期近物）は、4月21日にザラ場で1バレル＝75.35ドルの史上最高値（4月24日にも記録）を付けた以降は、調整局面が続いている。

高値警戒感が強まっていたことに加えて、米国が戦略石油備蓄への積み増しの一時停止を発表したこと、米国週間石油統計で製油所の稼働率上昇が確認されたこと、原油の在庫が増加したこと、米国の改質ガソリンの規格変更に伴う懸念が後退しつつあること、金や銅など商品相場全般に調整圧力が広がったこと、などが原油相場の下落要因となった。しかし、一方で、イランやナイジェリアを中心とした原油の供給懸念や、米国の製油能力不足への懸念はなかなか早期に解消される見込みが立たず、原油相場は下げにくい状況が続いている。5月23日の原油相場は、71.76ドルだった。

２．トピック～エタノールと石油の代替について

米国では、環境問題への対応として、燃料効率の引き上げなどにつながる添加剤を加えた改質ガソリンが大都市圏を中心に利用されており、ガソリン需要全体の3分の1を改質ガソリンが占めている。その添加剤の切り替えがこの5月にかけて一斉に行われ、すでに全米の製油所で生産される改質ガソリンの96％以上がエタノールを添加剤に利用したガソリンに切り替えられている。

原油と代替的なエタノールの需要が拡大すると、原油価格の上昇局面ではエタノールへのシフトが起こり、原油価格の安定に寄与するかもしれない。しかし、代替燃料の存在が、原油価格の価格を抑制するかどうかは、供給サイドが需要動向に柔軟に対応できるかどうかによって違ってくる。

原油の代替資源が存在するということは、価格に応じて原油が使われたり、使われなかったりするため、原油の需要変動はより大きくなる可能がある。つまり、原油とエタノールとの代替性が強まれば、製油所や産油国には、より柔軟な供給体制が求められるようになるといえる。製油所や産油国は、現在以上の余剰生産力を持つようにならないと、供給懸念が強まり、原油価格を押し上げてしまう可能性もある。

原油レポート No.80 エタノールと石油の代替について

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