１．原油市況～調整気味に推移

5月中旬以降、多くの商品相場が大幅に下落する中で、原油相場も調整気味に推移している。6月20日の原油価格（ＷＴＩ、期近物）は、1バレル＝68.98ドルとなった。4月21日と24日にザラ場で付けた75.35ドルの最高値に比べると、9％低い水準である。しかし、銅など非鉄市況がピーク時に比べ2割前後も下落しているのに対して、原油相場の下落幅は1割前後にとどまっており、相対的には底堅い推移といえる。

米国をはじめ世界の原油需給は緩和気味で推移しているものの、イランやナイジェリアからの原油供給に対する懸念が根強いことが背景にある。また、米国製油所の稼働率の上昇やガソリン在庫の増加を受けて和らいでいるとはいえ、夏場のガソリン需給が逼迫することへの懸念も続いている。

２．トピック～イラン問題の動向と原油価格

イランは今年の1月10日に核研究の再開を打ち出し、2月4日にＩＡＥＡ(国際原子力機関)緊急理事会は、イランの核開発問題を国連安全保障理事会に付託することを決めた。その後、経済制裁の可能性が取り沙汰される中で、その報復としてイランからの原油輸出が停止される事態が懸念されるようになっていた。

しかし、ここにきて事態の打開を目指す動きが出てきている。6月1日には、イギリス・フランス・ドイツ・ロシア・中国に米国も加わった6カ国で、対イランの包括提案で合意した。包括提案の中身は、イランが核開発を中断した場合の経済支援や核を含めた技術支援を強調した内容とされる。

21日に、イランは6ヶ国案に対する検討結果を8月22日までに回答するとして、6ヶ国側が求めていた回答期限（6月末前後と推察される）をあとずらしする意向を示した。結局のところ、イランと米国との相互の不信感がどの程度、拭えるかが鍵になるが、多少なりとも前向きな回答が出てくる可能性があろう。なお、原油在庫率と原油価格との関係などから類推すると、イラン問題によって最大で10ドル程度、押し上げられている可能性がある。

原油レポート No.82 イラン問題の動向と原油価格

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