１．原油市況～上昇に転じる

6月下旬に入って、原油相場は上昇傾向に転じてきた。市場では、イラン問題をはじめとする地政学リスクに対する警戒感が根強いことに加えて、夏場のガソリン需要の増加観測が強まっている。6月30日の原油相場（ＷＴＩ、期近物、終値）は、1バレル＝73.93ドルと5月初旬以来の水準に上昇してきている。

28日に発表された米国週次石油統計によると、6月23日に終わる週の原油在庫は、前週比340万バレル減少した。背景には、米国の製油所がガソリン需要のピーク期に向けて増産していることがある。原油市場は米国のガソリン需要の増加に対して敏感になっている。また、7月4日にイランは、西側諸国が要求するウラン濃縮の停止を拒否する旨の発言を行った。一部報道によると、7月12日までにウラン濃縮を止めない場合、国連による経済制裁が行われる可能性があるとされ、イラン問題についての懸念も強まっている。

２．トピック～原油高は日本経済にどのように波及しているか

原油高が業績に影響する業種や企業も出ているが、これまでのところ原油高によって景気が腰折れしてしまうような深刻な影響は現れていない。原油高は、原油相場上昇→原油輸入価格上昇→石油製品価格上昇→電力料金・輸送運賃・原材料費の値上げ、といったルートで日本経済に波及すると考えられる。

原油相場の変動は、１～２ヶ月の時間差で日本の輸入原油価格の上昇となって現れており、そのタイムラグで原油高の影響は日本に上陸している。もっとも、円建ての原油価格は、ドル建ての原油価格よりも、上昇ペースは緩やかである。円建ての原油価格の上昇は、日本国内で、ガソリンなどの石油製品に転嫁され、石油化学製品の値上げも緩やかに行われている。電力や輸送分野では、競争が厳しいことや経営効率の

原油レポート No.83 原油高は日本経済にどのように波及しているか

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