１．原油市況～地政学リスクを懸念し史上最高値更新

6月下旬に入って、原油相場は上昇傾向に転じてきた。7月14日の原油相場（ＷＴＩ、期近物、終値）は、1バレル＝77.03ドルまで上昇した。米週間石油統計で原油・ガソリンの在庫が減少を続けたこと、イスラエル軍がレバノンに侵攻したこと、イラン制裁案が安全保障理事会で協議される可能性が高まったこと、などが材料であった。地政学リスクと景気拡大という原油相場上昇の構図が続いているが、足元は、地政学リスクの要因が大きく作用している相場になっている。

その後、一部報道でイスラエル軍による攻撃の早期中止観測が出たことや、これまでのところ中東諸国による原油禁輸措置に発展する可能性が小さいとみられることから、原油相場への直接的な影響は限定的との見方が出ており、18日の原油相場は1バレル＝73.54ドルに下げた。

２．トピック～原油高の企業・家計への影響

原油高の価格転嫁は適度に進んでおり、本来なら原油に連れ高しやすい電力料金や輸送費が自由化や競争の激化によって抑制されていることもあって、今のところ原油高によって景気が腰折れするような動きにはなっていない。しかし、ゆっくり広く薄くではあるが、原油高の影響は、企業や家計に及んでいる。

日本の輸入原油価格は、2002年に1キロリットルあたり1.9万円であったものが、2006年1～5月平均では4.5万円まで上昇してきている。日本の原油輸入量は年間約2.5億キロリットルであり、1キロリットルあたり2.6万円（＝4.5万円－1.9万円）値上がりすると、原油輸入金額は6兆円以上も増える。石油製品や天然ガスや石炭も含めると、化石燃料の輸入金額は価格の上昇により8.3兆円押し上げられている。

原油高は、ガソリン・灯油や電力料金、石油化学製品などへの転嫁を通じて、家計や企業に広く負担されている。試算によると、ガソリンや灯油の値上げや電力料金への影響を中心に家計は約2.4兆円を負担している計算になる。企業部門の負担は、燃料費、電力料金、石油化学製品を中心に約5.6兆円となる。

原油レポート No.84 原油高の企業・家計への影響

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