１．原油市況～下落基調で推移

９月に入って原油相場は下落基調が続いた。季節的に需給の緩和期にあることや世界景気の減速観測が強まったことに加えて、イラン核問題で事態が緊迫化することへの懸念が和らいだことなどが背景であったが、月末にかけて下げ止まる動きも出ている。原油相場（ＷＴＩ、期近物、終値）は、米国で住宅関連の経済指標が弱めに出た20日に、1バレル＝60.46ドルまで下落した。その後、25日には一時的に59.52ドルまで下落したものの、ＯＰＥＣによる減産の観測が強まったことなどから、原油相場の下落は一服し、29日の終値は62.91ドルとなった。

２．トピック～原油相場の下落をどうみるか

原油相場は値動きの激しい相場であるが、それでも2割以上の下落は頻繁に起こるわけではない。2割以上の下落は、2000年代に入って今回を含めて5回しか起こっていない。

足元の原油相場下落は、(1)レバノン情勢の安定により一時的な相場押し上げ要因が剥落した、(2)イラン情勢について急速に緊迫化することへの懸念が後退している、(3)ガソリンの需要期が過ぎて暖房向け需要もない季節的に需給が緩みやすい時期であるといったことに加えて、(4)世界景気の減速という景気循環要因への懸念や、(5)それに伴う投機マネーの収縮観測も、下げ相場の要因になっているとみられる。(1)～(3)は一時的要因だが、(4)～(5)は景気循環的な要因と考えることができるであろう。

今後の相場動向を考えるうえでは、景気循環的な要因が重要なポイントになってくる。現状から判断すると、(1)世界景気は減速しているといっても、原油需要が大幅に落ち込むほど減速する様相はない、(2)一部ヘッジファンドの失敗などがあったものの、マネーの収縮が原油相場に大きく影響するような環境でもないと考えられる。また、ＯＰＥＣが減産を行う可能性も考慮に入れると、原油価格の水準は現状から一段と下落するよりも、高止まりする可能性の方が高いのではないだろうか。

原油レポート No.89 原油相場の下落をどうみるか

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