１．原油市況～昨夏以来の高値となる70ドル台

原油相場（期近物、終値）は、6月以降上昇基調で推移しており、7月3日には71.41ドルと昨年8月以来の高値を記録した。最近の相場の変動材料をみると、6月27日に発表された米国週次石油統計では、製油所の稼働率が5週間ぶりに上昇したものの、需要が好調なガソリンの在庫が減少したことで、相場の押し上げ材料視された。また、イランの核開発問題をめぐる緊張状態や、治安が回復しないナイジェリア情勢も相場を押し上げる要因となった。

原油相場はブレントやドバイが小幅高で推移する中、ＷＴＩの上昇が目立っている。今後、米国のガソリン需給の逼迫観測は後退してくる可能性があるが、一方でＯＰＥＣの減産効果が出ていることや地政学リスクへの懸念が続くこともあり、今後も原油相場の下値は限定的とみられる。さらに、米国景気の改善とともに需給の引き締まりが予想され、年後半にかけても原油相場は緩やかな上昇が続く可能性がある。

２．トピック～先高観測が弱まるＷＴＩ

原油市場では、今年3月頃から、欧州の指標であるブレントやアジアの指標とされるドバイに比べて、米国のＷＴＩの値動きが弱い状況が続いていたが、5月以降は、その状況が徐々に修正されてきている。そのため、ブレントやドバイが小幅高にとどまる中で、ＷＴＩの価格上昇が目立つ格好になっている。一方で、原油先物市場における原油価格の先高観測が弱まってきている。

先高観測が弱まってきたことは(1)クッシング（オクラホマ州）における在庫余剰感の解消、(2)ガソリン需給の逼迫観測、(3)米景気の減速観測後退などによる原油相場の上昇が一巡し、一段の価格上昇を見込み難くなっているという市場参加者の見方が反映されている。ガソリンの需要が一服する9月にかけて、原油相場の上値は重くなると考えられる。しかし、米国景気の拡大テンポは、依然、高まる途上にあるとみられ、年末頃にかけて景気再加速による需要増加観測を背景に、原油相場は緩やかな上昇傾向を続けると予想される。

原油レポート No.107 先高観測が弱まるＷＴＩ

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