１．原油市況～史上最高値の更新が続く

原油相場（期近物）は、8月下旬から騰勢を強め、再び史上最高値を更新している。9月12日の終値は1バレル＝79.91ドル、取引中には一時80.18ドルを記録した。米国の原油在庫の減少が続いていること、パイプライン漏れに伴い供給が懸念されたこと、パレスチナやイランを巡る地政学リスクやナイジェリアやイラクの生産障害が続いていること、などが相場の買い材料とされた。ＯＰＥＣ総会を前に増産が見送られるとの観測が強かったことも、買い安心感につながっていた。実際には、9月11日のＯＰＥＣ総会では増産が決定されたが、期近物を中心に相場の上昇が続いた。

原油相場（ＷＴＩ、期近物）は上昇基調を続け、9月20日の終値は1バレル＝83.32ドルまで上昇した。その日の夜間の電子取引では、一時84.10ドルを記録した。

原油相場が一段と上昇した背景には、米国週次石油統計で原油在庫の減少が続いていること、低気圧の接近によってメキシコ湾岸の一部の油田での原油生産が停止されたこと、19日に米国が利下げを決定し景気後退への懸念が和らいだこと、ドル安が進みドル建て原油価格の押し上げ材料とされたことなどがある。もっとも、懸念された暴風雨による生産障害は起こらず、25日の終値は79.53ドルとやや下落した。

今後は、ＯＰＥＣが冬場に追加増産を行う可能性があることや、サブプライムローン問題への懸念が続きそうなことが相場の抑制要因になってくるだろう。また、冬場に入って暖房油価格が高止まりしていれば、景気への悪影響が懸念され、結果的に原油相場の下落圧力になってくる可能性もある。もっとも、サブプライムローン問題の影響により実体経済が腰折れする可能性は小さいとみられ、来年にかけて米国景気の改善とともに需給が引き締まり、原油相場は緩やかな上昇を続ける可能性がある。

２．トピック～原油高の影響がそれほど懸念されない理由

原油相場が史上最高値の更新を続けていても、それほど景気への悪影響が懸念されていないように思われる。その背景には、いくつかの要因がある。

まず、欧州の指標であるブレント原油をユーロ建てでみた場合や、アジアの指標であるドバイ原油を円建てでみた場合に、原油相場の水準は今年の7月の相場水準まで上昇しているに過ぎない。また、米国では原油価格は上昇しているが、石油製品価格への影響は限定的である。ガソリン価格は過去のピーク期に比べ低水準であり、暖房油価格は上昇しているものの、需要期である冬場までにはまだ時間がある。

経済への影響が大きくなく、石油需要が減退することもなさそうだからこそ、原油相場は上昇してきたのだと考えられる。しかし、原油相場が80ドル台半ばを大幅に上回る状態が続くようなことがあれば、需要減退観測や景気減速懸念が生じやすくなるであろう。

原油レポート No.112 原油高の影響がそれほど懸念されない理由

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