１．原油市況～再び100ドルに迫る

原油相場（ＷＴＩ、期近物）は、11月13日に一時1バレル＝90ドル割れまで下落したものの、再び100ドルに迫っている。11月20日の時間外取引では、99.29ドルの最高値をつけた。ドル安や暖房油在庫の減少などが相場の押し上げ要因となっている。

21日発表された米国の週次統計では原油、暖房油在庫がともに減少し、いずれも昨年と比べ大幅に低い水準にとどまっている。米北東部の気温が低めで推移していることもあり、本格的な寒冷期を前に需給逼迫が懸念されている。また、ドルが対ユーロで連日の最安値を更新する中、ドル以外の通貨建てでみた原油の割安感が意識された。サブプライムローン問題を背景に景気に慎重な見方が広がっているものの、ドル安→原油高の思惑などを背景として投機的な要因で原油が買われる状況が続いている。

もっとも、足元の相場を押し上げたとみられる投機的な動きは、今後一服してくる可能性がある。12月のＯＰＥＣ総会では追加増産が決定されるとみられ、石油製品高による景気への悪影響も懸念されるであろう。来年にかけて米国景気の拡大が持続するのに伴い、原油需給は引き締まり相場の上昇基調は続くと予想されるものの、目先の原油相場は調整局面入りする可能性がある。

２．トピック～原油高による日本経済へのマイナス効果

原油相場が1バレル＝100ドルまで上昇すると、50ドルの時に比べて、平均的なサラリーマン世帯のガソリンと灯油への支出は年間約3.3万円増える。

しかし、日本経済全体でみると、原油高の悪影響はもっと大きいと考えられる。原油価格が1バレルあたり10ドル上がると、日本の輸入金額は年間で約2兆円増える。原油相場が1バレル＝50ドルの時(2005年の前半がそうであった)に比べて、原油相場が100ドルの時には日本が支払わなければないない輸入代金は10兆円も増えてしまうのである。国民一人あたりにすれば約8万円に相当する。一世帯あたりに換算すると（3人家族を想定）、24万円もの負担増になる。原油高による日本経済へのマイナス影響の多くは企業部門で吸収され、消費者に直接的にはあまり及んでいないが、人件費抑制などを通じて結局は国民の負担となってくる可能性がある。

原油レポート No.116 原油高による日本経済へのマイナス効果

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