１．原油市況～下落傾向

原油相場（ＷＴＩ、期近物）は、1月3日に史上最高値となる1バレル＝100.09ドルをつけた後下落基調に転じ、22～23日には86ドル前後まで下落した。もっとも金融市場が落ち着きを取り戻すと原油相場も下げ止まり、25日終値は90ドル台を回復した。

世界的な株安には歯止めがかかりつつあるが、世界の金融・商品市場の値動きは荒く、ドル安→原油高の思惑による投機が注目を集めにくくなっているとみられる。原油相場は、昨年秋以降の上昇が急ピッチであったことから、他の商品相場と比べた割高感が意識されてくることも考えられる。ＯＰＥＣ総会で増産決定が見送られる見通しであることなどが相場を下支えするとみられるものの、石油在庫は下げ止まってきており、ひところの需給逼迫懸念は薄らぎつつある。世界景気の減速は引き続き懸念材料となり、当面は原油需要の減速度合いに相場の関心が集まろう。

２．トピック～中東のマクロ経済動向とオイルマネー

湾岸諸国では原油高を背景に財政・経常収支が大幅黒字となり、余裕資金がオイルマネーとして世界経済に還流されている。近年のオイルマネーの動向をみると、中長期的な観点からリスク資産投資を積極的に拡大させている。投資先については、米国が過半を占めるものの世界中に分散しており、最近では中東・北アフリカ地域への投資が目立つ。

湾岸諸国の経済成長の内訳をみると、エネルギー関連の成長が頭打ちとなる中、建設投資、個人消費、住宅投資など非エネルギー分野が経済成長をけん引している。原油需給が将来的に軟化する局面を見据え、各国で金融、観光、石油化学などに積極的な投資が続いている。また、従来から所得水準が高かったこれら地域では、原油価格上昇前の2002年と比べ1人当たり所得が2倍程度に急成長しており、個人消費、住宅投資がブームとなっている。非エネルギー分野での高成長にともない、湾岸諸国の原油需要が拡大しており、世界的な原油需要の押し上げ要因にもなっている。

中東地域では、原油価格の上昇が経済全般の成長につながる好循環が見られ、オイルマネーの動向とともに、実物経済の分野でも存在感が高まっているといえよう。

原油レポート No.120 湾岸諸国のマクロ経済動向とオイルマネー

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