１．原油市況～105ドルを超える

原油相場（ＷＴＩ、期近物）は、6日に史上最高値となる1バレル＝105.97ドルをつけた。需給面の材料としては、5日に発表された米国週次統計において、原油在庫が予想外の減少を示したことが大きかったと思われる。このほか、イスラエル軍が再びガザ地区に侵攻したこと、ＯＰＥＣ総会で増産が見送られたこと、ベネズエラがコロンビア国境に軍隊を展開したといったことなどが価格上昇の材料として挙げられた。

原油相場が投機的な関心を集めやすい背景には、ドル安と株価の低迷がある。米景気減速への懸念は株安やドル安につながりやすい一方で、ドル安は商品相場全体の押し上げ要因とみなされている。目先はドル安を材料とするＷＴＩの上昇基調が続きやすく、原油相場のボラティリティを考慮すると、110ドル台への上昇はみておいた方が良いかもしれない。もっとも、昨年後半から大幅に上昇した原油や金の相場水準はすでにかなり高いところにある。原油相場（ＷＴＩ）は、米景気の減速による石油需給の緩和感を受けて4～5月には80ドル台半ばに反落する可能性があると思われる。

２．トピック～金平価と地域間格差からみた原油価格上昇の理由

足元の原油相場の上昇は妥当なものなのだろうか、行き過ぎたものなのだろうか。原油の金平価と地域間格差の動向を基に判断してみたい。

原油の金平価は安定している。原油と金がともに、インフレ等のリスクを回避する投資対象とみなされたために買いが集まっている可能性や、原油と金がそれぞれ個別の需給要因で買われている面もあろう。少なくとも原油だけが割高だとはいえない。

一方、原油価格の地域別格差をみると、ＷＴＩの価格上昇が目立っている。米国・欧州・アジアの経済成長率の動向とは乖離する動きになっており、ＷＴＩが相対的に買われ過ぎている可能性を示唆していると思われる。

ドル安やインフレへの懸念により原油相場が押し上げられ、中でもＷＴＩが割高になっている。欧州やアジアの景気の底堅さを反映してブレントやドバイの価格がより上昇してＷＴＩ高が修正される可能性もあるが、世界的に景気の先行きが懸念されている中で、ＷＴＩに下落圧力がかかってくる可能性の方が大きいと思われる。

原油レポート No.123 金平価と地域間格差からみた原油価格上昇の理由

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