１．原油市況～140ドル台に

原油相場（ＷＴＩ、期近物）は、6月27日の取引で一時1バレル＝142.99ドルと史上最高値を更新した。6月22日にサウジアラビアのジッダで開催された産油国と消費国の緊急閣僚会合では、原油高への懸念は共有され、サウジアラア等の増産姿勢や投機的取引への監視強化が打ち出されたものの、市場では、織り込み済みあるいは即効性を欠くとの評価が広がったようだ。26日には、リビヤが減産の可能性を示唆したことや、ＥＣＢ（欧州中央銀行）の利上げ観測を背景にしたドル安を材料に大幅に原油高が進んだ。原油価格上昇の可能性を示唆したヘリルＯＰＥＣ議長の発言も相場を押し上げる材料になったとみられる。

最近は、為替相場や株式相場と原油相場との連動性がみられ、ドル安や株安を受けて原油を買い進める投機的な思惑が強まりやすくなっているとみられる。また、米国では、夏場はガソリン需要が増加する時期であり、ハリケーンによる供給障害なども気にされやすい。しかし、実際には景気減速やガソリン価格上昇により、米国のガソリン需要は抑制されるとみられ、為替相場の動向にも影響されやすい地合いは続くものの、年末にかけて、いったん100ドル程度まで反落する可能性があろう。

２．トピック～原油高による所得移転の規模

2008年の原油相場が平均140ドルになったと仮定すると、原油の消費者から原油の生産者への所得移転は世界のＧＤＰの4％に相当する規模で発生する。世界経済の実質成長率は4％程度であるから、原油の消費者にとっては世界経済の成長を帳消しにしてしまうほどのインパクトがあることになる。

一方、産油国では設備投資やインフラ投資が活発化したり、消費が拡大したりするため、先進国や新興国から産油国への輸出が増えることにつながる動きも出てくる。しかし、急に産油国の収入が増えても何を購入したり、何に投資するかを考慮する時間が必要であり、すぐに全てが支出されるわけではない。

実際、過去の例をみて、原油高により大規模な所得移転が発生した後には、世界経済の成長率が大幅に鈍化していることがわかる。

原油レポート No.130 原油高による所得移転の規模

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