１．原油市況～一時90ドルに迫る

原油相場（ＷＴＩ、期近物）は、8月後半にグルジア紛争やハリケーンによる供給懸念を背景に一時120ドル台まで反発したが、9月に入って再び下落基調が強まった。9月16日には1バレル90ドルに迫った。

原油相場の下落材料として、(1)9月上旬はハリケーン「グスタフ」の被害は懸念されたよりも小規模にとどまった、(2)ドル安のヘッジと目されていた原油など商品への投資が手控えられた、(3)9月半ばにかけてはハリケーン「アイク」の被害も小さく供給懸念は後退した、(4)また15日に米大手証券会社の破綻が発表され景気先行き懸念や投資資金が流出するとの思惑も生じた、などが指摘された。

原油相場は、景気減速懸念や投機資金の流出への思惑から目先は下値を模索する動きが続きやすい。一方で価格下落が進むと、ＯＰＥＣが協調減産に転じる可能性があり、値ごろ感から中国などの原油購入も増えるとみられる。足元で急速に強まった景気減速懸念が、今後、弱まっていくにつれて、原油相場は下げ止まり、90～100ドルを中心とした推移が見込まれる。

２．トピック～原油価格の二面性

足元では原油価格と株価はともに大きく下落しており、世界景気の減速観測が強まっていることを象徴した動きといえる。しかし、景気との関連性からみると、原油価格の動向には二面性がある。それまでの景気動向を表わす面と、今後の景気動向に影響を及ぼす面とである。

景気動向により原油需給が変化して、原油価格が変動する傾向が支配的なのが2000年代の特徴であった。しかし、投機が行き過ぎて原油価格が大幅に変動した場合には、地政学リスク等の供給サイドの要因による原油価格の変動と同様に、原油価格が景気動向に及ぼす傾向が強まると考えられる。株価下落などによる新たな景気抑制圧力が生じているものの、原油価格下落による景気下支え効果はそれなりに大きい。そして、原油価格の変動が景気動向に大きな影響を及ぼす場合には、株価の動向も原油価格に間接的に影響されることになる。

原油レポート No.135 原油価格の二面性

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