１．原油市況～景気減速観測を背景に80ドル台半ばに下落

原油相場（ＷＴＩ、期近物）は、金融市場の混乱を背景に乱高下が続いているが、相場のレンジは徐々に切り下がってきている。10月9日の終値は1バレル＝86.59ドルであった。ハリケーンによる油田や製油所の生産障害が続いたにも関わらず、需給逼迫感は出ておらず、ガソリンなど製品の足元の需給はむしろ緩和気味に推移しているようだ。8日に発表された米国週次石油統計では、生産活動の復旧が進む中で、原油やガソリンの在庫が増加したことが示された。

原油相場は、9月後半に一旦下落に歯止めがかったが、10月に入って景気減速懸念や投機資金流出観測によって再び下落基調が強まった。当面、景気減速による石油需要減退観測が相場の下落圧力になる。一方で、ＯＰＥＣの協調減産が強化されるとの観測や、値ごろ感から中国などの原油購入が増えるとの見方が下値を支える要因になろう。目先は狼狽的な売りにより下落が加速するかもしれないが、その後は、80～90ドル台を中心とした推移になると見込まれる。

２．トピック～原油安と為替相場について

原油相場が7月につけた147ドルをピークに下落に転じている。「金融市場が不安定化し、景気減速観測が強まっていることがその背景にある」と説明すれば、非常に説得力がある。しかし、振り返れば、昨年、米国でサブプライムローン問題が拡大していった際にも景気減速観測が強まったが、原油は上昇を続けた。何が違うのだろう。

今回、原油価格が下落している背景としては、経済情勢が昨年よりも悪化していることに加えて、ドル高が進んだことも考えられる。

2007年頃から、ドル安と原油高が連動する傾向が強まっており、その関係をあてにしたドル売りや原油買いが行われた可能性がある。ドル高局面では、その投機ポジションは解消を迫られたり、逆にドル買いや原油売りに転じたりする向きもあったとみられ、原油安に拍車をかけた

原油レポート No.137 原油安と為替相場について

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