コロナ禍での落ち込みから訪日外国人数（インバウンド）が順調に持ち直している一方、海外旅行に出掛ける日本人数（アウトバウンド）は持ち直しの途上にある。出入国在留管理庁「出入国管理統計」によると、2025年1～9月期の出国日本人数は1,086万人と、2019年同期の1,506万人に対して7割強の回復にとどまっている。

持ち直しが緩慢な背景には、円安やインフレによる海外旅行の割高感がある。観光庁「旅行・観光消費動向調査」によると、観光・レクリエーション目的での海外旅行ひとり1回当たり消費額（含む旅行前の準備代金）は、コロナ前2019年の259,847円/人回から、2024年には318,452円/人回と22.6%も増加しており、海外旅行の負担が大きくなっている。内訳を見ると、最も増えているのが海外旅行中の交通費（渡航費）であり、2019年の33,650円/人回から2024年には64,373円/人回と約3.1万円も増加している（図表）。

他方で、費用を少しでも抑えて海外旅行を楽しみたいという意識も垣間見られる。例えば、買物代は2019年の31,785円/人回から2024年には28,131円/人回に約3千円減少しており、お土産代を減らすことで費用を抑制しようとする姿勢がうかがえる。また最近は日本人の渡航先としてアジア人気が高まっている模様であり、近隣国への旅行で渡航費を抑える傾向が強まっている可能性がある。足元で進行している円安は海外旅行に逆風だが、そうした状況でも海外旅行を楽しみたいと考える人々は一定数いるとみられ、種々の節約意識も働く中で、今後も日本人の海外旅行需要は底堅く推移すると期待される。

図表　海外旅行ひとり一回当たり消費の変化（2019年⇒2024年）

（出所）観光庁「旅行・観光消費動向調査」を基に当社作成

今月のグラフ（2025年12月）割高感の中でも底堅い海外旅行需要

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