加速するタイ小売企業のクロスボーダー展開

●タイ小売企業の海外展開が加速している。タイの国内消費自体は2016年に入り上向きつつあるものの、2010年の人口ボーナスの終了、2020年以降の人口減少の可能性、AEC（ASEAN経済共同体）などの経済協定締結に伴うクロスボーダー競争の激化などの諸要因が海外展開を後押ししている。

●その象徴的な事例を、タイのセントラルグループとTCCグループに見ることができる。セントラルグループは、2011年のイタリアの百貨店ラ・リナシェンテを皮切りに、2013年のデンマークの百貨店イルムや、2015年のドイツの百貨店カーデーヴェーの買収など買収により欧州事業を強化しており、2014年の欧州事業売上高6億ユーロから、2020年には20億ユーロに拡大する見通しを立てている。加えてASEANでは、インドネシアやベトナムなど人口規模の大きい国での事業強化を優先的に進めている。特にベトナムでは、従来の専門店や百貨店の進出に加え、2015年12月の地場スーパー「Lan Chi」との資本提携、2016年4月のビッグCの買収など足元で小売事業の提携・買収が相次いだ。セントラルグループがこれ程提携・買収を加速し始めた背景には、TCCグループの存在があると見ている。

●TCCグループは従来飲料事業や不動産事業を主力事業として展開してきたが、近年グループ卸会社のバーリユッカーを通じて小売事業を急速に強化しつつある。その象徴的な事例が2016年3月のタイのビッグC買収である。当初ビッグCを運営する仏カジノグループは、タイのビッグCブランドを買収した企業に同ブランドのベトナム事業も売却する方針があったとされ、ベトナム小売市場でのTCCのプレゼンスの拡大を懸念したセントラルグループがベトナムのビッグCに手を打ったという見方ができよう。

●ベトナムは約9,000万人の人口を抱え、TPP締結に伴い経済成長にドライブがかかることが予想されるなど消費市場に更なる立ち上がりが予想される国だが、大手小売事業者は限られている。セントラルグループやTCCグループはこの点に目をつけ、自国で調達しているタイ製品の横展開も含め、マーケティングを強化しながらメコン圏での競争力強化を図っている推察される。．．．．（続きは全文紹介をご覧ください）

＜2016年6月29日修正＞
2ページの「セントラルグループ・TCCグループの海外小売事業展開事例」の表において、
セントラルグループの「デンマークの百貨店イルムを買収」年を2011年から2013年に修正いたしました。

タイ小売企業の海外展開と日系企業への影響

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