途上国の出口戦略 カスケードリサイクルの可能性~シリーズ「食品産業のプラスチック包材にみるサステナビリティ」②~

2021/11/15 富田 愛梨
サステナビリティ
サーキュラーエコノミー
グローバルビジネス

連載「食品産業のプラスチック包材にみるサステナビリティ」では、食品産業界における食品パッケージのプラスチック包材廃棄物を手掛かりに、今後の日本企業に求められる対応のあり方や取り組みの可能性などを深堀していく。本稿では、途上国におけるカスケードリサイクルについて紹介する。

1. 途上国におけるプラスチックリサイクルの実態

アジアをはじめとした途上国では、プラスチックのリサイクルに向けた社会インフラが依然として十分整備されておらず、近年においてもそのリサイクル率は約10~20%にとどまっている。回収・リサイクルされず、河川から海洋に放出されるプラスチック廃棄物も後を絶たない。

以前はアジアにおける多くの国・地域が、プラスチック廃棄物を「資源」という位置づけで中国に輸出していた。だが、2017年に世界最大の輸入国である中国が、リサイクル処理に伴う環境汚染などを理由に輸入規制を始めたことで、プラスチック廃棄物の行き場が失われてしまった。それまで中国に輸出していた一部の国・地域では、自国内で処理を行うようになったものの、プラスチック廃棄物の処理体制が伴わない国・地域においては、海洋流出に拍車がかかっており、全世界の海洋に投棄されるプラスチック廃棄物の内、約80%はアジアからの廃棄物が占めている状況にある。

こうした環境下において、途上国で各企業が対応可能な回収・リサイクル手法は限定的となっている。元の製品と同じ用途・品質の資源に再循環させる水平リサイクルはおろか、廃プラスチック(廃プラ)の固形燃料化や焼却時の熱量をエネルギーとして利用する熱回収さえもほとんど行われていない状況である。このような中で、企業はどのように道を切り開くべきであろうか。

2. グローバルメーカーの掲げるリサイクル目標と課題

プラスチックの海洋投棄や環境に配慮したリサイクルについては、世界全体の課題としても意識されている。国連は国際目標としてSDGsの17の目標を定め、その中で脱プラスチックや海洋保全など環境・気候変動のテーマを取り上げている。

こうした時流を受けて、大手グローバルメーカー各社でも企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)の中でプラスチックリサイクル率やバージンプラスチック(新品のプラスチック)の削減などの目標を掲げ始めている。2018年にエレン・マッカーサー財団と国連環境計画(UNEP)によって発表された「New Plastics Economy Global Commitment」には、2020年時点で約450社もの企業が参加しており、その顔触れには世界の小売り企業トップ5社、消費財メーカー6社、容器包装メーカー7社が名を連ねている。本コミットメントでは、2025年までのプラスチック廃棄物削減目標と行動計画の自主申告(「Global Commitment」)が求められている。例えば、ネスレ(Nestlé)もその参加企業の1社として、再生・生分解性包材の開発やリユース・リフィルの推進を通じて、2025年までにリサイクル可能なプラスチック包材を100%にすることを目指している。

しかし、リサイクル整備のなされていない途上国において、特に食品包材などのアルミニウム箔といった不純物を含む難易性の高い素材のリサイクルは困難であり、企業は自社の掲げた目標を達成することに苦慮している。

3. 企業の取組事例:「リサイクル困難なプラスチック包材」をリサイクルする工夫

本章では、目標を掲げたものの各国の実態とのギャップに苦しむメーカーの解決の糸口として、実際に大手グローバルメーカーの途上国におけるリサイクル事例を紹介する。

以下の事例では、水平リサイクルには及ばないものの、下がった品質の資源やエネルギーをその品質に応じて再循環させるカスケードリサイクルの例を中心に取り上げたい。

カスケードリサイクルは、元の製品よりも品質が一段低い他の製品・素材にリサイクルするため、水平リサイクルと比較して容易に行うことができる。このため、リサイクルにかかる手間が削減され、エネルギーも効率的に活用できる。また、製造における経済的な負担の軽減にもつながるという利点がある。一方、カスケードリサイクルされた製品は、元の製品ほどには十分な需要が存在しない可能性もある。だが、アジア諸国においては建材や道路補材といった資材に利用されていることからも、十分に活用先の見込みがあり、リサイクル率を高める有効な選択肢と考えられる。

【図表1】リサイクル手法におけるメリットとデメリット

図 リサイクル手法におけるメリットとデメリット

(出所)資料を基に当社作成

(1) 廃プラを建材に再加工する例

たとえばネスレは、フィリピンにおいて建材メーカーのグリーンアンツビルダーズ(Green Antz Builders)と連携し、食品包材から建材へと再加工している。具体的には、地方自治体と協力し、ラミネート加工された食品包材などのプラスチック小袋を回収、洗浄、細断した後、セメント原料に混合しリサイクル建材として再利用を実施・推進している。また、モンデリーズ・インターナショナル(Mondelēz International)は、フィリピンで使用済みの食品包材やビニール袋、ペットボトルを細断し、ブロックの中に詰め込んだ小屋や滑り台、ベンチ等を学校に設置している。グローバルメーカーではないが、トルコ地場の建材メーカーのエーゲ・プロファイル・トレード・アンド・インダストリー(Ege Profil Ticaret ve Sanayi)では、建設業界の廃プラを回収し、資源として窓枠に再加工している。

(2) 廃プラを道路舗装材に再加工する例

インド政府は、2015年に国内すべての道路舗装事業者に対して道路舗装材の一部としてプラスチック廃棄物を活用することを義務付けた。使い捨てバッグやチョコレート等に使用される厚さ50ミクロン未満のプラスチック包装等を細分化し、砂利、アスファルトの素材となるビチューメン(瀝青:れきせい)等と混合したものを、道路補材としてインド全土の複数都市で活用している。

ジャムシェドプル公益事業会社(JUSCO)では、プラスチック廃棄物を利用して鉄鋼都市に12~15キロメートルの道路を建設している。この技術により、通常の道路敷設に利用されるビチューメンの量は6~8%削減可能となった。同時に、耐用年数がビチューメンのみで造られた道路の約2倍となり、最初の5年間はメンテナンス不要である点においてもコスト削減につながっている。

また、チャッティスガル市でも同様に、プラスチック廃棄物と交換で食事を提供するカフェで回収されたプラスチックが、リサイクル工場にて粒状(グラニュール)にされた後、成形道路の舗装材として使われている。

(3) 熱回収による道路補材への活用例

廃棄物を単に焼却処理しないで、焼却の際に発生するエネルギーを回収・利用する熱回収の例も一部ある。ネスレは、フィリピンにおいてバレンズエラ市とパートナーシップを結び、33のバランガイ(集落)から廃プラスチック小袋と使用済み飲料カートンを回収している。回収した小袋は、セメントメーカーのリパブリックセメント(Republic Cement)により焼却と同時に熱回収され、セメント製造に利用されている。

4. 今後の企業に求められる対応

これまで紹介したように、アジアをはじめとするプラスチックリサイクルの規制や環境が整っていない途上国では、アルミニウム箔を含む複雑な食品包材などのリサイクルは難しい状況にあった。こうした中で、各企業は工夫を凝らしながら、さまざまなリサイクルの形を探っている。

中でも、自社製品包装廃棄物のリサイクルや管理強化を考える企業にとって、比較的容易に行え、なおかつ経済的な観点からもコスト削減が可能なカスケードリサイクルは、有効な選択肢の1つである。グローバル食品メーカーが現地の建材メーカー等と連携しながら食品プラスチック包材のリサイクルに取り組む余地は十分にあり、またその際には単独でなく他の同業他社と共同でローカルイニシアティブに参画、協働して取り組む余地もあると思われる。

日系企業においても、各国のリサイクル事情と課題に応じた事例にならい、出口戦略を模索、導入していくことが、今後のリサイクル目標と現状とのギャップを埋める鍵となるだろう。

参考文献

「Share of global plastic waste emitted to the ocean, 2019」(2021年10月4日確認)

・ELLEN MACARTHUR FOUNDATION HP「A circular economy for plastic in which it never becomes waste」(2021年10月4日確認)

・ELLEN MACARTHUR FOUNDATION HP「Organisation Reports Global Commitment 2020 Progress Report」(2021年10月4日確認)

・経産省「プラスチックを取り巻く国内外の状況」(2021年10月4日確認)
「プラスチックの水平リサイクルとカスケードリサイクルの評価」(2021年10月4日確認)
http://www.osusume-space.com/(2021年10月4日確認)

・Nestlé HP「Nestlé, Green Antz address waste plastic laminates」(2021年10月4日確認)

・ABS-CBN NEWS「Mondelez PH taps The Plastic Flamingo for ‘substantial’ investment in recycling」(2021年10月4日確認)

・Ege Profil Ticaret ve Sanayi HP「WHY PVC」(2021年10月4日確認)

・CNN-News18「Noida Constructs Road Using Plastic Waste, Following in the League of Other Indian Cities」(2021年10月4日確認)

・THE STRAITS TIMES「Use recycled plastic for roads: The Daily Star」(2021年10月4日確認)

・Nestlé HP「Nestlé Philippines accelerates journey to a waste-free future」 (2021年10月4日確認)

・Republic Cement HP「Republic Cement Expands Partnership With Nestlé Philippines」 (2021年10月4日確認)

【専門用語集】

掲載回 専門用語 意味
2 水平リサイクル 元の製品と同じ用途・品質の資源に再循環させること。
2 廃プラスチック(廃プラ) 使用後に廃棄されたプラスチック、またはその製造過程で出たプラスチックのカスやプラスチックを主成分とする廃棄物などを指す。
2 熱回収 サーマルリサイクルとも呼ばれている。廃棄物の焼却処理時に発生する熱エネルギーを回収し、利用すること。
2.3.4 SDGs 持続可能な開発目標を指す。
2 企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility) 経済、環境、社会などの幅広い分野に企業が与える影響を考慮しながら、顧客、株主、従業員、消費者などの要求に対して、適切な責任を果たしていくこと。
2 バージンプラスチック 新品のプラスチックのこと。
2 国連環境計画(UNEP:ユネップ) 地球環境問題に取り組む国連の中核機関として、1972年国連人間環境会議(開催:ストックホルム)の決議により設立された。
2 カスケードリサイクル 下がった品質の資源やエネルギーをその品質に応じて再循環させる。
2 ビチューメン(瀝青:れきせい) アスファルトの素材。厚さ50ミクロン未満のプラスチック包装等を細分化し、砂利、ビチューメン等と混合し、道路補材等としてインドの複数都市で活用・実施されている。
2 飲料カートン (ろう引きの)厚紙などで作られた飲料用の紙の箱のこと。

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