三菱ＵＦＪフィナンシャル・グループの総合シンクタンクである三菱ＵＦＪリサーチ＆コンサルティング株式会社（本社：東京都港区社長：水野俊秀）は、名古屋第二環状自動車道（以下、名二環という。）及び地下鉄桜通線が平成23年3月に相次いで開通・延伸開業することに先立ち、これら交通プロジェクトを、都市の成長・成熟過程に与える種々のインパクトを分析する好例として取り上げ、自主研究を進めてきました。今回は、「これまでに確認できる社会経済的インパクト」をとりまとめましたのでプレス発表いたします。今後も分析を続け「開業前後のデータに基づく経済効果分析」として平成23年末頃に再度プレス発表を予定しています。

【調査結果の概要】

名二環名古屋南JCT～高針JCT間（3つのICを含む高速道路）12.7kmが平成23年3月20日（日）に、地下鉄桜通線　野並駅～徳重駅間（4駅）4.2kmが同年3月27日（日）に、都市高速と地下鉄の交通プロジェクトが同時期に開通・開業する。
名二環と地下鉄桜通線沿線地域である緑区・天白区は、都市的土地利用（建物用地、幹線道路用地等）が7割以上を占める名古屋市都市部の縁辺部に位置しており、夜間の方が昼間よりも人口が多いベッドタウン地域である。最寄りICまで5km以上と遠く、鉄道駅までも3km以上離れていることから、高速交通ネットワーク及び公共交通機関が利用しづらい地域であった。また、市民の移動手段は自動車利用が5割程度となっており、大都市にあっては自動車への依存度が著しく高い地域である。
この緑区・天白区は名古屋市における代表的な人口増加地域であり、平成7年から平成22年までの人口変化率は名古屋市が4%増加に対して、天白区では12%、緑区では21%増加している。これは同期間の名古屋市の人口増加量（9.2万人）の6割を占める人口増加であり、名古屋市の人口増加を支えている地域とも言える。これに関連して、住宅着工件数（持ち家・分譲住宅）も緑区では1,000～2,000戸で推移しており、名古屋市平均（500～1,000戸）を大きく上回り、市内における内需活性化を下支えしている。また、小売業の出店傾向も根強く、緑区のH17年以降の大規模店舗立地は市内トップとなっているなど、名古屋市の成長センターとなっている。
地価についてみると、緑区の住宅地地価水準（平成23年）は12.0万円/㎡で、名古屋市平均15.2万円/㎡を下回っており割安な地域となっている。しかし近年は、緑区・天白区の地価の上昇は顕著であり、平成17年を基準とした住宅地地価の伸びは全国平均を大きく上回って推移した。平成23年の全国の公示価格の変動率上位10位に緑区が5地点含まれるなど、全国トップ水準の上昇率となっている。顕著な地価上昇率を示しているのは、名二環と桜通線の沿線地域で、とりわけクロスエリアが著しい。これは、沿線地域の地価の割安感が顕在化するとともに今後の発展ポテンシャルへの期待が高まっていることを反映したものと考えられる。
こうした地価に見る市場評価の変化は、沿線地域における大規模店舗やマンション立地の活発化とも連動している。その結果、徳重駅周辺は、名古屋駅10～20㎞圏の住宅地地価では藤が丘駅周辺に次ぐ地価となった。また、これまで都心から等距離にありながら比較優位であった長久手町杁ヶ池公園駅周辺に比肩してきているなど、交通プロジェクトが都市としての成長を促し、地域･都市空間の質の向上に寄与する因果関係を示唆している。
今後の分析課題として、「地域・都市空間の質の向上」や「都市の成長･成熟化」への寄与について各種経済指標・交通データを用いて詳細に分析し、名二環と地下鉄桜通線がもたらすインパクトの特性を明らかにするとともに、広域的な経済効果の把握も行い、当該交通プロジェクトの果たす役割について総括していきたいと考えている。

名古屋市の成長を牽引する交通プロジェクト～名二環・地下鉄桜通線同時開業が地域に与えるインパクト～

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