令和4年度 成果連動型民間委託契約方式(PFS)に関する実態調査報告

2023/12/27 大塚 敬、中村 優花、細木 翼
自治体経営
EBPM

近年、行政運営の効率化と質の向上を図る新たな手法として「成果連動型民間委託契約方式」=「PFS(Pay For Success)」が注目され、国の成長戦略にも掲げられました。このような状況の下、地方公共団体における導入事例は「SIB(Social Impact Bond)」(PFSによる事業を受託した民間事業者が、当該事業に係る資金調達を金融機関等の資金提供者から行い、その返済等を成果に連動した地方公共団体からの支払額等に応じて行うもの※)とあわせて徐々に増えてきているものの、全国で十分に普及しているとは言い難い状態にあります。

地方公共団体を取り巻く厳しい環境に対し、限られた資源の中で民間事業者のノウハウを活かして、成果の最大化を図るPFS について、その取組状況や地方公共団体の関心、課題などを明らかにすることは、PFS 活用に向けた施策・事業の展開やPFSの今後の可能性などについて検討する上で重要と考えられます。

そこで、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「自治体経営改革室」では、全都道府県、市区町村を対象として、PFSの実態と課題に関する実態調査を実施しました。
※内閣府ホームページ(https://www8.cao.go.jp/pfs/pfstoha.html

<調査結果概要>

■調査対象:全都道府県、全市町村、東京都特別区  計1,788団体
■回収数(率):733団体(41.0%)
■概要

  • PFS・SIBの認知度について、約8割の団体が存在は認識しており、自治体内での認知度は高まってきている。一方で、具体的な仕組みまで理解している団体は16.5%にとどまり、内容の理解は十分には進んでいない。
  • PFS・SIB導入の検討状況は、具体的な検討を行っておらず、検討に向けた取組も特に行っていない団体が85.4%にのぼる。実際に、PFS・SIBを検討しない理由としては、「庁内全体でPFS・SIBに対する理解が進んでいないから」「PFS・SIBについて詳しく知らないから」が多くなっている。行政職員の間でPFS・SIBに対する理解がまだまだ進んでいない状況がある。
  • PFS・SIBを活用したい分野としては、「健康増進」が44.4%と最も高く、これまでに事例の蓄積がされてきた分野で、活用意向も高い。一方で、これまで国内では実施事例の少ない「施設・インフラの維持管理」が40.1%と次いで高くなるなど、他分野への活用への関心の高さもうかがえる。
  • 今後PFS・SIB事業を検討する団体は10.9%であった。PFS・SIB事業における期待として、PFS・SIBを導入することで、成果に応じて報酬が支払われることによる民間事業者の事業改善努力の促進や、民間事業者のノウハウを活かした新しい行政サービスの試行と検証ができることへの期待が大きいことが読み取れる。
  • 一方、導入に向けて困難な点として、成果指標の設定や支払条件に紐づく成果目標の水準設定が主な課題として挙げられている。また、PFS・SIBに対する理解不足も課題となっている。

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