【要旨】

本レポートでは、外国人との共生政策の構造化、ならびに共生政策を評価可能なものにするための指標の設定の事例として、英国の統合指標の枠組み設定に関する取組を紹介し、日本の「外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ」への示唆を検討した。

（1）英国の取組

英国では、内務省が移民・難民とその受入地域の住民に対する調査研究の結果を基に、統合の領域を14にまとめた統合指標の枠組み（Indicators of Integration framework）を作成し、外国人の統合に関係する政策領域の整理が行われている。
外国人と受入社会の接点となる労働、教育、医療・福祉といった領域だけでなく、共生のために必要な言語能力や、文化やデジタルツールに関する知識、さまざまな形態の社会関係などの14の領域が統合政策の対象となり、それぞれの領域は、優先順位等の序列関係ではなく、統合において果たす4つの大まかな役割に分けられ、「経路」によって結びつくものと位置づけられている。
また、統合に向けた取組を設計・評価する際、Theory of Change for Integrationというロジックモデルの利用が推奨されている。Theory of Change for Integrationにおいては、プロジェクトを通してもたらしたいインパクトを最初に設定し、インパクトを具体化する形でアウトカムやアウトプットを定め、具体的な介入策を検討するという設計の流れが効果的とされる。プロジェクトの目的の達成状況を測るため、アウトカムやアウトプットに指標を設定することが求められるところ、アウトカム指標として参照可能な統計・調査のリスト化も行われている。

（2）日本の共生政策への示唆

日本においても、外国人との共生社会のビジョンと、実現に向けて取り組むべき施策がまとめられた「外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ」が作成・改訂されているところ、「ロードマップ」の課題として、モニタリングの指標が不明瞭であること、また目指す共生社会像（アウトカム）と具体的な施策（介入）の関係が不明瞭であることなどが有識者から指摘されている。
実現したい共生社会の姿から各政策領域におけるアウトカムを設定し、アウトカム達成のために必要な施策を導出するという手順をとることで、外国人との共生のための施策を整理し、エビデンスに基づいて施策を改善することができると考えられる。また、アウトカム指標を設定し、既存の統計や調査で取られている項目で指標として利用できるものをピックアップすることで、各施策の達成状況の把握が可能になると考えられる。

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外国人との共生社会に向けた政策の日英比較～英国のTheory of Changeから学ぶ～

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