三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社（本社：東京都港区、代表取締役社長：池田雅一）は、2024年8月に「GRC（ガバナンス・リスク・コンプライアンス）に関するサーベイ」を実施しました。このほど調査結果を取りまとめましたのでお知らせいたします。

1. 調査趣旨と結果概要

(1) 調査趣旨

本サーベイは、さまざまなステークホルダーにおいてGRC領域全般に対する関心が高まっていることを踏まえ、ガバナンス態勢やリスク・コンプライアンス管理態勢の整備状況について、企業の取り組み実態を把握することを目的に、2021年度より継続的に実施しています（^※）。
目まぐるしく変化する不確実な事業環境において、企業価値向上を実現すべく自社の経営戦略を着実に遂行していくためには、GRCの各領域における適切な態勢の構築・運用と、それによるリスクへの適切な対応が必須です。さらに、バリューチェーンの複雑化・高度化やステークホルダーからの要求事項の多様化を踏まえると、自社の態勢強化のみならずサプライチェーン全体にわたるリスクの把握と管理も求められるようになりつつあります。昨今のこうした状況を念頭に、本サーベイでは、日本企業が現在重要視しているリスクを把握するとともに、GRC領域における各企業の取り組み状況を調査しています。
本サーベイの結果が、日本企業のGRC領域に係る取り組みの推進および見直し検討の一助となれば幸いです。

本サーベイのエグゼクティブサマリーについては、「GRC（ガバナンス・リスク・コンプライアンス）に関するサーベイ」　よりダウンロードいただけます。なお、サーベイにご協力いただいた企業には、全体レポートを無料配布いたします。

（ ※ ）過去の調査結果
・2023 年度「GRC（ガバナンス・リスク・コンプライアンス）に関するサーベイ結果【2023年度】について～「攻めのガバナンスとGRC領域におけるDX」が重要に～」https://www.murc.jp/news/information/news_240111/
・2022 年度「GRC（ガバナンス、リスクマネジメント、コンプライアンス）に関するサーベイ結果について～企業価値向上の観点からみるガバナンス・リスク管理態勢の課題～」https://www.murc.jp/news/information/news_230201/
・2021 年度「コーポレートガバナンス／リスクマネジメントに関するサーベイの結果について～サステナビリティ時代を生き抜くガバナンス態勢構築は道半ば～」https://www.murc.jp/news/information/news_220201/

(2) 調査結果のポイント

① 各社のリスク認識およびリスク管理態勢の現状

【図表A】は日本企業がどのようなリスクを特に重視しているのかを一覧化したものです。昨今、地政学リスクの高まりや生成AIをはじめとしたテクノロジーの進展、労働人口の減少などにより、企業を取り巻く事業環境は大きく変化しています。本サーベイの結果においても、日本企業が最も重要視するリスクは3年連続で「事業環境の変化」となっており、不確実な現状を反映していると考えられます。このような環境下において着実に経営戦略を遂行するためには、リスクの適切な管理が極めて重要であるといえます。
リスク管理態勢について、本サーベイの結果、リスクに対する平時の対応は一定程度行われており、回答した企業の約3分の2がリスク管理の結果を経営の意思決定に利用していることがわかりました（図表B参照）。さらに、約9割の企業が何らかのBCPを策定していると回答していることから、有事への対応についても事業継続の観点で多くの企業が態勢を整えていると考えられます（図表C参照）。

直近3年間の日本企業が重視するリスク上位10位
リスク管理の仕組みが導入されており、経営管理に利用されていますか
BCPの策定状況について教えてください

② 課題1：既存の取り組みの深化・高度化

リスク管理の枠組みである「3つの防衛線モデル」［¹］に関しては、業務執行の最前線となるいわゆる第1線のリスクオーナーシップの醸成や、第1線の活動を管理・監督する第2線の監督機能強化と人材の確保などが今後の課題として多く挙げられました（図表D参照）。リスク管理のための態勢の整備がある程度進んだ状況において、態勢の運用に耐え得る人材育成および人材確保の必要性が高まっていると考えられます。

「3つの防衛線」モデルをより有効に機能させるにあたり、改善すべき事項があれば教えてください

BCPについては、策定済みであるもののその想定が自然災害やサイバー攻撃など特定の事象に限定したものにとどまっている企業が全体回答の7割以上を占めました。（図表C参照）。事業継続に重大な影響を及ぼすリスクが多様化する現在の事業環境を踏まえると、あらゆる突発事象に対応が可能な「オールハザード型」BCPの策定が望ましいといえます。しかしながら、オールハザード型BCPを整備しているとの回答は全体の15％程度であり、さらなる強化が必要です。
また、マテリアリティ特定をはじめとするサステナビリティ領域とリスク管理活動との連携や、GRC業務におけるITシステムやAIの導入も今後の課題であることがわかりました。

③ 課題2：サプライチェーンをはじめとする社外へのリスク管理の展開

リスク管理活動は、グループ会社を含めた社内では、ある程度取り組みが浸透しつつあります。しかし近年では、サプライチェーンをはじめとする社外にもリスク管理を拡大する必要性が高まっています。
仕入先・外部委託先に対して、Q・C・D（品質・コスト・納期）以外のサステナビリティリスクを把握しているか尋ねた設問では、「いいえ（把握していない）」との回答が7割を超え、サプライチェーン全体のリスク管理を行っている企業は依然として少数にとどまることが明らかになりました。

④ 今後の展望と企業に求められる対応

日本企業が不確実性の高い環境下でも企業価値を向上させ続けるためには、ガバナンス態勢のさらなる高度化が不可欠であり、特に取締役会の実効性評価や適切な役員指名・報酬制度の導入といった「経営の規律付け」と、リスクや不祥事を防止するための管理態勢をはじめとする「経営の執行管理」の2つの観点からのアプローチが重要となります。
しかし多くの日本企業では、リスク管理や内部統制などの内部管理態勢を業務執行側にのみ依存しているケースが散見されます。自社が直面するリスクを管理し安定した事業遂行を実現するためには、業務執行の現場だけで（広義の）ガバナンス管理態勢を検討するのではなく、取締役会がこれまで以上に監督機能を発揮しガバナンス改革に取り組むことが効果的です。

【参考】ガバナンス態勢に係る具体的な取り組み事例

2. 調査概要

調査対象	売上高500億円以上または東証プライム／スタンダード上場企業のうち約5,500社
実施時期	2024年8月
調査手法	調査票郵送方式 ※調査票の発送および回収、データ入力作業については株式会社東京商工リサーチに委託
有効回収数	266社（4.83%）
調査項目	Ⅰ．ガバナンスについて Ⅱ．リスク管理／コンプライアンスについて Ⅲ．GRC（ガバナンス・リスク・コンプライアンス）インフラについて Ⅳ．サプライチェーンのサステナビリティリスクについて
調査結果の表示方法	① 調査結果は百分比（%）で表示する。 ② 百分比（%）は端数処理の関係上、内訳の合計（100%）と一致しない場合がある。 ③ 複数回答可の設問については、集計対象企業総数に対する百分比（%）の合計が100%を超える場合がある。

調査回答企業のプロファイル

［ 1 ］リスクを有効管理するためのモデル。このモデルでは、リスクを所有し管理する第1の防衛線／第1の防衛線に対してリスク管理業務の支援・監督をする第2の防衛線／独立した立場からコントロールおよびリスク管理業務全般の有効性を評価し、取締役会並びに経営者に対して保証を与える第3の防衛線と、各防衛線の役割・責任を明確化することで、リスクの有効的な管理が実現されるとしている。

本件に関するお問い合わせ

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
コンサルティング事業本部　GRCコンサルティング部
〒105-8501 東京都港区虎ノ門5-11-2オランダヒルズ森タワー
E-mail : grcsurvey@murc.jp

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GRC（ガバナンス・リスク・コンプライアンス）に関するサーベイ結果【2024年度】について～不確実性の高い環境下で求められるガバナンス態勢～

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