インドの経済動向(2021年1~3月期) ~コロナ・ウィルス感染急拡大で、景気の先行きへの懸念が高まるインド~

2021/06/23 堀江 正人
アジア景気概況
海外マクロ経済
  • インドの2021年1~3月期(2020年度第4四半期)の経済成長率は、前年同期比1.6%となり、2020年10~12月期(0.5%)よりもやや加速した。1~3月期の成長率がプラスになったのは、政府消費と投資の拡大に負うところが大きく、個人消費も1年ぶりにプラス成長に復帰した。内需がようやくプラス成長に戻ったことで、インドの今後の景気加速が期待できそうな状況になった。
  • ところが、今年春に、インドは、コロナ・ウィルス感染拡大の第二波に襲われた。インドにおけるコロナ・ウィルス新規感染者数は、2020年6月頃から増加し、2020年9月をピークに減少傾向となり、その後、横這い状態だったが、2021年3月から5月にかけて変異種ウィルスによる爆発的な第二波の感染拡大が発生した。この感染拡大が、2021年4~6月期以降の景気に打撃を与える可能性が高まっており、これまで回復を続けてきたインドの景気の先行きに不透明感が漂ってきた。
  • 昨年春のコロナ禍発生を受け、中銀は、昨年3月と5月に利下げを実施し景気の下支えを図ったが、その後インフレ率が上昇し政策金利を超えるという中銀にとって苦しい状態が続いた。しかし、2021年4月にはインフレ率が4.3%まで下がり、実質金利の大幅なマイナス状態は、ひとまず解消された。
  • 乗用車の月間販売台数は、コロナ・ショックで、昨年4月に3万台まで激減したが、昨年夏以降持ち直し、2020年9月には31万台まで回復した。その後は、概ね月間25万台のペースで推移していたが、今年5月には、コロナ・ウィルスの第二波感染拡大の影響で8.8万台へ急減した。
  • 工業生産指数伸び率は、インド全土で実施されたロックダウンのため、2020年4月には前年同月比▲57.3%という大幅な落ち込みとなったが、ロックダウン終了後に急回復した。しかし、コロナ・ウィルスの第二波感染拡大の影響で、今年5月以降は再び大幅に落ち込むと見られる。
  • インドの経常収支は、サービス収支と第二次所得収支の黒字額を貿易収支赤字額が上回るという構造のもとで、慢性的な赤字が続いていた。しかし、コロナ禍による景気悪化で輸入が減少し、貿易赤字が縮小したため、2020年の経常収支は黒字化した。ただ、今後、景気が回復して輸入が拡大すれば、経常収支は再び赤字に転落する可能性が高い。
  • インド経済が、慢性的な財政赤字・経常赤字という「基礎疾患」を抱えているにも拘わらず、ルピーの為替相場は安定している。巨大市場であるインドには、成長ポテンシャルに魅かれて世界中から資金が流入し、資本純流入額が経常赤字をオフセットするパターンが定着、これによってもたらされる国際収支面でのソルベンシー・リスクの低さを背景に、ルピーの相場が安定していると言えるだろう。
  • インドの株価は、コロナ禍による大きな被害を受けたロシアやブラジルと同様、2020年3月に急落した。しかし、その後、インドの株価は、ロシアやブラジルを上回る勢いで急速に回復しており、2020年11月には過去最高値を更新、その後も上昇し続けている。これは、インドの今後の経済成長に対する投資家の期待感の高さを反映するものと言えよう。ポスト・コロナの新興国株式市場の中でも、インドは、成長市場として大きな存在感を示し続けそうである。

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