2022/2023年度短期経済見通し(2022年6月)(2次QE反映後)~下振れリスクが増す中、緩やかな回復基調が続く~

2022/06/10 調査部
日本経済短期見通し
GDP
国内マクロ経済
  • 6月8日発表の2022年1~3月期の実質GDP成長率(2次速報)は、前期比-0.1%、年率換算-0.5%(1次速報の前期比-0.2%、年率換算-1.0%を上方修正)とマイナスとなった。年明け後のオミクロン株の急速な感染拡大が2四半期ぶりのマイナス成長につながった。もっとも、個人消費は1、2月に低迷するも3月末にかけて持ち直し、小幅ながら前期比プラスを維持した。この動きは2022年度に引き継がれており、4~6月期の実質GDP成長率は対面型サービスの需要回復を主因としてプラス成長に復帰し、実質GDPの水準もコロナ前を回復すると予想される。
  • 7~9月期以降も景気の回復の動きは維持される見込みである。2022年度中は、感染拡大防止と経済社会活動の活性化のバランスを慎重に図ることが求められ、需要の回復を抑制する要因となるであろう。それでも、ワクチン接種の進展、医療提供体制の整備、治療薬の確保などの新型コロナウイルス感染症対策がとられる中で、感染の一時的な拡大はあっても小規模にとどまり、緊急事態宣言、まん延防止等重点措置などの経済活動抑制策の適用は回避されると想定している。このため、個人消費を中心に景気は回復基調を維持する見込みであり、感染状況次第でGo Toキャンペーンなどの需要喚起策の再開が可能となることもサポート材料となる。また、昨年度の補正予算、物価高対策、外国人観光客の受け入れ開始などの政策効果も、景気を下支えするであろう。
  • 2022年度の実質GDP成長率は前年比+2.0%(ゲタの効果を除いた成長率では同+1.7%)を予想する。2022年度は、徐々にコロナショック前の生活様式に戻っていく、アフターコロナ期への移行期間に位置付けられると考えられ、平時への復帰が景気を押し上げる原動力となる。
  • ただし、①ウクライナ情勢悪化による資源価格上昇や日米金利差拡大を受けた円安によって物価が上昇しており、消費者マインド悪化、実質購買力の低下を通じて、感染収束後の消費の回復を抑制する、②コスト増加によって企業業績が悪化し、それが設備投資や雇用・賃金の削減につながる、③世界的な物価上昇を背景に、米国をはじめとした各国で金融政策が引き締めに転じており、金利上昇が世界経済の回復ペースを鈍らせる、④上海ロックダウンの影響など物流の混乱により生産制約や品不足が深刻化する、といった景気下振れリスクが、景気回復のブレーキとなることが懸念される。また、労働需給がタイト化しつつあり、人手不足を背景に供給制約が発生するリスクもある。
  • 2023年度は、コロナの感染拡大による経済社会活動の制限はほぼ解消される見込みであり、景気の回復が続く。実質GDP成長率は前年比+2.0%(ゲタの効果を除いた成長率では同+0.9%)を予想する。人手不足や地政学リスクといった景気の下振れリスクが高まる懸念はあるものの、コロナ禍で得た教訓の成果が効力を発揮し、労働生産性向上や潜在成長力の底上げを促すと期待される。

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