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タイ子会社の再編における目的とは?

タイで相次ぐ日系企業の事業再編・資本再編

2021/06/11
吉田 崇

タイでは製造業を中心に、日本企業による子会社の事業再編・資本再編が相次いでいます。
下表は、最近の主な事例をまとめたものですが、こうした大企業だけに留まらず、実際には多くの中堅・中小企業の間でも、タイ子会社の事業再編・資本再編は活発に検討され、実施されています。
本コラムでは、なぜ日本企業によるタイ子会社の事業再編・資本再編が活発化しているのか、その背景にある目的を整理しています。

表 タイにおける主な事業再編・資本再編の事例(2020年下期~2021年5月末)

会社名 発表時期 概要 再編スキーム
1 本田技研工業 2021年4月 二輪車の販売会社、生産会社、持株会社の3社を合併 新設合併
2 日立物流 2021年4月 事業会社(2社)から、別の事業会社へ事業譲渡 事業譲渡
3 AGC 2021年3月 生産会社(上場)を上場廃止し、別の生産会社(非上場)と合併 新設合併
4 日本通運 2021年3月 事業会社から、別の事業会社へ事業譲渡 事業譲渡
5 日本製鉄 2020年12月 他の株主が保有する株式を取得して連結子会社化 出資比率引き上げ
6 スズキ 2020年11月 既存会社(二輪車の生産・輸出・販売)から、新設会社に販売事業を移管 事業譲渡
7 昭和電工マテリアルズ 2020年10月 生産会社(2社)を合併 新設合併
8 日清食品ホールディングス 2020年10月 シンガポール子会社からタイ子会社(持株会社)へ現物出資 現物出資
会社名 発表時期 概要 再編スキーム
1 本田技研工業 2021年4月 二輪車の販売会社、生産会社、持株会社の3社を合併 新設合併
2 日立物流 2021年4月 事業会社(2社)から、別の事業会社へ事業譲渡 事業譲渡
3 AGC 2021年3月 生産会社(上場)を上場廃止し、別の生産会社(非上場)と合併 新設合併
4 日本通運 2021年3月 事業会社から、別の事業会社へ事業譲渡 事業譲渡
5 日本製鉄 2020年12月 他の株主が保有する株式を取得して連結子会社化 出資比率引き上げ
6 スズキ 2020年11月 既存会社(二輪車の生産・輸出・販売)から、新設会社に販売事業を移管 事業譲渡
7 昭和電工マテリアルズ 2020年10月 生産会社(2社)を合併 新設合併
8 日清食品ホールディングス 2020年10月 シンガポール子会社からタイ子会社(持株会社)へ現物出資 現物出資

(出所) 各社プレスリリース資料よりMURC作成

目的1:役割の変化に対応するための機能拡充

目的の一つ目は「機能拡充」です。

歴史的に、タイに集積する日系企業、特に製造業の多くは、工場としての役割に特化しており、管理面でも生産機能の維持こそが最重要テーマでした。また、部品メーカーにとって、販売先は日本の親会社またはタイ国内の既存顧客が主で、営業の重要性は低く、タイ子会社として顧客発掘が求められる場面は、それほど発生していませんでした。しかし、コロナ禍の影響も多分にあり、タイの日系企業の多くも、新たな販路獲得の必要性を感じています。
他方、ポジティブな側面として、タイで事業を継続する中で、現地人材が育ってきたという事情もあります。

こうした状況のもと、生産機能に留まらず、いわゆる地域統括機能を含めた管理面や営業面への機能拡充を考える場合、合併や事業譲渡による再編が検討されます。例えば日清食品の事例は、タイ子会社の地域統括機能を拡充させることが目的と考えられます。

目的2:法人の集約・再編による事業効率化

二つ目は「事業効率化」です。

タイでは法人設立が容易であることや、外資規制などへの対応もあり、一社で複数の子会社を設けている例が多く見られます。また近年では、日立物流のように現地企業を買収する例も増えてきました。
このように、タイ国内で複数の子会社に事業を分散させている場合に、事業効率化の観点から再編したいというニーズは、ホンダをはじめ、非常に多くの日系企業で見られるものです。

一方で、同じ二輪車であっても、スズキはホンダと対称的に、事業を分散させる再編を行なっています。目的は同じ事業効率化であっても、各社にとって適切な戦略と取るべき再編スキームは異なるため、状況に応じた綿密な検討が必要であることを示しています。

目的3:税制優遇の活用

三つ目は「税制優遇」です。

シンガポールやマレーシアなど近隣諸国と同様に、タイにも地域統括機能に対する優遇税制が設けられています。しかし、その恩恵を受けるためには、一定の要件を満たしたうえで、相応の許可取得手続きが必要です。一方で、こうした許可を取得しないまま、実質的に地域統括機能を既に行使しているような日系企業の事例も多く見られます。

こうした企業が税制優遇を受けるためには、既存の枠組みでは要件を満たせないことが多く、再編などによる優遇税制の適用可能性が検討されます。

さいごに

タイ子会社の事業再編には、外資規制(商務省)、投資誘致制度(BOI)、税制(歳入局)など、タイ固有のルールを踏まえた十分な事前検討が求められます。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングでは、タイ子会社(MU Research and Consulting (Thailand) Co., Ltd.)と連携しながら、多くの日系企業の事業再編・資本再編を支援しています。

ご検討の際はぜひご相談ください。

コンサルティングや各種サービスについては、
こちらからお問い合わせください。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
コンサルティング事業本部

グローバルコンサルティング部
マネージャー
吉田 崇

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