採用や配置における適性検査の活用・分析方法

2022/04/19 古川 琢郎
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従業員がそれぞれの強みや特性を生かして活躍するためには、企業がどのような人材が自社に合うかを把握し、適切な採用・配置をしていることが重要です。

その際に活用できるサービスのひとつとして、適性検査が挙げられます。従来、適性検査は選考中の候補者にのみ受検してもらうという使い方が一般的でしたが、近年、まず従業員に適性検査を受けてもらい、その結果を採用や異動に活用するサービスや事例が増加しています。それにより、「どのような人材が自社に合うのか」を定量的に把握する目的で適性検査を導入する企業も増えています。

本コラムでは採用および異動・配置の場面で、適性検査を効果的に活用した事例を紹介します。

採用における適性検査活用事例

新卒採用を定量的に行うことを目的に過去の適性検査データの分析を行った、大手メーカーの事例です。従来の適性検査の結果のみでは、各項目の数値が出されているだけで、その結果を総合的に捉えて「その人はどういう人なのか」をイメージするのは困難でした。そこで統計解析により回答結果を6種類の人材タイプに分類し、「守り、攻め」「フォロー、リード」の2つの軸で4象限にマッピングを行いました。

適性検査による新卒入社者の人材タイプおよびタイプ別の活躍者割合

図 適性検査による新卒入社者の人材タイプおよびタイプ別の活躍者割合

(出所)プロジェクトにおける分析結果をもとに当社作成

同時に既存の従業員を業務内容に応じて事務系と技術系に分け、6種類の人材タイプに当てはめることで、業務内容ごとに活躍しやすい人材タイプを可視化しました。可視化することで、活躍しやすいタイプの人材を採用できているか、母集団に該当する人材がどの程度いるかを検証しました。

その結果、必ずしも活躍可能性のある候補者を採りきれていないことや、採用候補者と面接官の人材タイプが特定の組み合わせの際に、データ分析上の活躍可能性が必ずしも高くない候補者も高評価を得やすいという傾向が検証されました。このことから候補者の見極めに課題があることが明らかになり、活躍可能性の高い候補者の見落とし防止を目的に以下の施策を実施しました。

  • 選考シートにおいて、採用候補者の人材タイプとタイプごとに面接で確認・検証すべき内容を明確化し、データ分析結果を定性的に補強
  • 候補者の人材タイプを踏まえて面接官をアサインし(特定の組み合わせを避ける)、評価のぶれを抑える

また、活躍する可能性が高い人材タイプの採用候補者に対して、同様の人材タイプかつ実際に活躍している従業員を面接官にすることで、より強く動機付けをすることも可能になりました。

異動・配置における適性検査活用事例

こちらは異動が非常に多い、金融系企業の事例です。異動運用をご経験された方は想像しやすいと思いますが、1人を異動させると別の人材をその組織に配置するといった玉突き人事が発生します。本来は個別の異動だけでなく、全体最適も考慮しながら検討する必要がありますが、そこに体系的な方法がなく、異動担当者の力量頼りという状況でした。

加えて金融業界では昨今のDXの潮流を受け、間接部門の人員削減をする流れがあり、これまで人事担当者の経験に頼っていた異動・配置をシステム化する必要に迫られていました。そこで行ったのが、データを活用した異動・配置モデルの構築です。

モデルの構成要素は、上司と異動候補者の組み合わせ、異動候補者と職務の組み合わせといった要素です。たとえば上司と異動候補者に関しては、「そのポジションの上司と異動候補者の人材タイプとしての相性」、異動候補者と職務に関しては、「過去にそのポジションで活躍していた人と異動候補者の類似性」を、適性検査を用いてスコア化していきました。先程の採用の事例で紹介したような人材タイプを作成することで、上司や職務とのマッチングをスコアリングし、一定の再現性のあるモデルに基づき効率的に決められるようになりました。

適正検査等のデータを活用した配置の全体最適化

図 適正検査等のデータを活用した配置の全体最適化

(出所)プロジェクトにおける分析結果をもとに当社作成

最後に

これまでも、適性検査を用いて「地頭の良さそうな人」「リーダーシップが強い人」「チームワークを重視する人」といったタイプを意識した選考や配置はなされてきました。しかしながら、各人事担当者ごとにその基準は異なっていたり、実際に各部門でどういうタイプが活躍しやすいか明確化はされていなかったりと、運用に耐える活用はなされていませんでした。上記で紹介したような取り組みや貴社に眠る他のデータも用いて、どのように採用・異動を高度化・効率化していくことが可能か、ぜひ当社の専門家にご相談ください。

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