なぜ企業のデータ利活用は上手くいかないのか?~データ利活用プラットフォームの動向と戦略的な課題~

2022/07/27 石川 恵太郎
Quick経営トレンド
デジタルイノベーション
経営管理
データ活用
AI

2012年頃からはじまったビッグデータ、AI(人工知能)、昨今のDX(デジタル・トランスフォーメーション)という一連のムーブメントによって、国内企業や社会においてデータ利活用は欠かせないテーマとなりました。内閣府の包括的データ戦略やデジタル庁の設置など、国家戦略でもデータ利活用が重要視されています。

データ利活用・流通の基盤とエコシステムに関する動向

このような流れを受けて、国内市場においてもデータ利活用関連のビジネスには多様なプレーヤーが出現し、新たな事業や雇用を生み出しながら、エコシステムが形成されつつあります。ここでは「データ利活用プロセス」を①取得・蓄積、②収集・加工、③分析・モデル化、④サービス提供の4つで捉え、それぞれの動向を整理しました【図表】。なお、下図の他にも該当するプレーヤー1等は存在しますが、紙幅の都合で割愛します。

【図表】データ利活用の流れと関連するプレーヤー、当社の取り組み

図 データ利活用の流れと関連するプレーヤー、当社の取り組み

出所:当社作成

①取得・蓄積では、以前から存在していた地図情報サービスに加えて、鉄道会社や携帯電話会社が本業によって集まったデータを外販ビジネス化するなど、多様なプレーヤーが出現しています。また学術論文などアクセス可能な情報も増えつつあります。政府オープンデータも統一ルール2の下に整備され、さらに利用が促進されるでしょう。

②収集・加工では、データ収集を支援する情報ベンダー・情報プラットフォーム3、データ加工の基盤を提供するITベンダーなどが以前よりも充実してきています。加えて、筆者が注目しているのはDATA-EX4です。これまではデータ流通基盤の取り組みは観光・気象・農業など各分野に閉じていました。データ取引所や情報銀行といった個々に分野の壁を超える取り組みはありましたが、より国家戦略としてデータ流通を推進する構想、および、基盤がDATA-EXです。

③分析・モデル化では、データ分析のハードルを下げるAuto ML5やセルフサービスBI6といったツール・基盤が出現しています。また人材育成の基盤には、経産省マナビDX Quest7やgacco8、さらには大学や官公庁が公開する無償教材などが挙げられます。スポットで分析を受託する企業、研修会社が提供する有償プログラムや書籍も以前よりも充実してきています。

④に該当するサービスは読者も数多く思い浮かべることができるかと思います。そのようなサービス提供企業に対してデータ取得などのAPIサービスやプラットフォームを提供する事業者、それらをマッシュアップした新たなサービスを企画・提供する事業者なども存在しています。

基盤やエコシステムを使いこなすための戦略的な課題

①から④まで必要な機能や資源を調達可能な昨今、単独での実現に拘らなければ、データ利活用を実現するハードルは以前より格段に低くなりました。

それでもデータ利活用を実現する企業は多くありません。その理由は、DXの文脈でも語られる9通り、「データ利活用によって何か価値を創出できないか」という発想が強く、事業戦略を実現するデータ利活用という考えが弱いことにあります。

データ利活用のプロジェクトが最初から成功することは多くありません。その理由には企業内データの不足や技術的な要因が挙げられますが、それらを最初から備える企業もまた少数です。実際には、できるところから少しずつ着手し、データ利活用プロセスを回しながら、人工「知能」を事業変革の基盤に「育てる」息の長い活動が必要です。

つまり、活動の成否を分ける真の要因は、このような長期にわたる活動を企業内でリードする人材・部門であり、その裏付けとなる予算や事業戦略と言えます。技術的に高度でも事業戦略に貢献しなかったり、高給で採用したデータサイエンティストがデータ基盤の「お守り役」をしていたりといった、事業戦略にデータ利活用が組み込まれていないことに起因した課題は、不足する機能や資源を外部調達しても解決しません。

昨今のデータ利活用・流通の基盤やエコシステムの動向は、データ利活用の導入に向けた技術面のハードルを低くする分、事業戦略における課題に企業が目を向ける契機となるでしょう。

【資料ダウンロード】

VUCA時代にDXを進めるマインドセットの育て方


1たとえば当社固有の取り組みとして「AIデータワーク導入支援」などがある。(地域就労継続支援施設での AIデータワーク支援事業の推進

2統計表における機械判読可能なデータの表記方法の統一ルールの策定(総務省)

3各種情報を収集・蓄積し、顧客に提供するサービスを行う事業者、および、基盤のこと。たとえば、企業情報ではSPEEDA、金融情報ではブルームバーグなど、多様な事業者がいる。

4データ社会推進協議会「DATA-EX」の取り組み

5AI予測モデルの構築など、機械学習(Machine Learning)を用いたデータ分析のプロセスを自動化すること、および、その技術。人が定義した問題や仮説に沿ったデータ分析の効率化・省力化に貢献する。

6エンドユーザー自身でデータ可視化やレポートの作成ができるように、操作性や視認性が従来より改良されたBI(Business Intelligence)ツール。全社導入による各種集計業務の効率化や意思決定の速度向上が期待される。

7令和4年度「マナビDX Quest」の受講生の募集を開始しました!(経済産業省)

8AI活用人材育成講座|AIの基礎知識や活用事例を分かりやすく解説 (ドコモgacco社)

9中堅・中小企業等向け「デジタルガバナンス・コード」実践の手引き(経済産業省)

執筆者

  • 石川 恵太郎

    コンサルティング事業本部

    ココロミルラボ室

    チーフデータサイエンティスト

    石川 恵太郎

関連レポート・コラム

facebook x In

テーマ・タグから見つける

テーマを選択いただくと、該当するタグが表示され、レポート・コラムを絞り込むことができます。