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現地調査からみる韓国・雇用許可制の実態

「フロントドア」からの受入れでもみられるブローカー、入国前借金、厳しい労働環境

2021/05/14
加藤 真

本稿では、韓国の低熟練外国人労働者の受入れ制度である、雇用許可制(Employment Permit System EPS )に関する国内外の評価を概観したうえで、これまで日本語文献ではほとんど扱われてきていない、韓国現地をはじめとする海外における調査・統計等から示唆される実態を整理する。これを踏まえ、最終的に日本の外国人労働者政策に関して求められる調査の観点や、今後のデータ整備について検討を行う。

【要旨】

  • 雇用許可制の評価のポイント

    □ 2004年から韓国で始まった低熟練外国人労働者の受入れ制度である雇用許可制は、国際機関や、日本の学術界、メディア等から、高い評価が与えられている。

    □ 評価のポイントは、1)ブローカーを排除する仕組みにしている、2)韓国人と外国人間で職の競合が起きないような仕組みにしている、3)(実習・研修等ではなく)労働者としての受入れにより、韓国人労働者と外国人労働者は均等待遇である、4)勤務先の移動を認めており、非正規滞在者が減少している、の4点にまとめられる。

  • 雇用許可制の実態(明らかになった点、上記4つの評価ポイントについて)

    1) 雇用許可制下において「非公式費用(賄賂・斡旋手数料)」や「民間ブローカー費用」が発生しており、100万円近い借金を背負って韓国へ入国している労働者が存在する。

    2)労働市場への影響を抑えるため労働市場テストを実施しているが、韓国人労働者の採用実績は1%程度にとどまる。韓国人労働者の中には外国人労働者の流入により雇用機会の縮小等の影響を受けている層が存在する。

    3)賃金、労働時間、住居環境等において、外国人労働者が劣悪な環境で就労・生活を強いられている実態が存在する。

    4)勤務先変更が制度としては準備されているが、実質的な利用は難しく、法令違反をして変更せざるを得ない状況がある。また、非正規滞在者数・割合は年々増加しており、勤務先から離脱し、非正規滞在化している労働者も一定割合存在する。

  • 日本への示唆
    (1)「サイドドア」からの受入れの帰結ではない

    □ 日本の外国人労働者政策については、「外国人労働者をフロントドア(正面)からではなく、実質的な労働者であるにもかかわらず、国際貢献等の別目的の建前を続け、「サイドドア」から受け入れている」という批判が定型句となってきた。

    □ だが、就労を目的とした在留資格を付与した「正面から」の受入れだったとしても、借金を背負った入国や劣悪な労働条件での就労、それらを背景とした失踪・非正規滞在化など、日本の技能実習制度で発生しているような事態が同様に起きている。入国前の借金の発生、劣悪な労働環境、失踪・非正規滞在化といった事象の発生は、フロントドアでもサイドドアでも起こりうる。

    (2)送出し国側との関わりで仲介斡旋費用や借金等の発生・額が決まる

    □ 入国前の仲介斡旋費用やブローカーの発生、借金の有無、さらには入国後の労働条件は、受入れ国の制度(実習か労働か等)だけでなく、送出し国側の制度も反映して決まる。

    □ そのため、受入れ側の日本の制度自体の見直しもさることながら、送出し国側の制度や実態についても目を向け、各国ごとに移住産業の構造や仲介斡旋費用発生のメカニズムについて詳細に把握していく作業が求められる。

    (3)検証可能なデータの整備、実態把握のための調査の実施と公表

    □ 本稿のような議論ができるだけの十分な検証データを定期的に国として取りまとめ、公表していることは、日本が韓国に大いに学ぶべき点である。

    □ 報道にてエピソードベースで目にする「100万円の借金を背負ってきている」技能実習生は、全体の何割程度を占めるのか、日本への移住のためにかかった費用はいくらくらいか、などの問いに定量的に全体像を示せない状況である。特に労働者本人に対する全国調査を行い、網羅的に実態を聴取し、その結果を公表することが求められる。

続きは全文紹介をご覧ください。

経済政策部
副主任研究員
加藤 真

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