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教職スタンダード不在の韓国。行政からの信頼に下支えされた、教員の主体性・多様性重視のCPDの在り方とは。

諸外国の継続的専門能力開発(CPD)から見る シリーズ第6弾

2021/10/01
森芳 竜太、鈴庄 美苗、横幕 朋子

【要旨】

「諸外国の継続的専門能力開発(CPD)から見る」シリーズの第6弾では、韓国のCPD(Continuous Professional Development)に着目する。本稿ではCPD政策を取り巻く教員養成政策について概括し、韓国のCPD政策について、近年の政策動向を調査した結果を現地機関へのインタビュー結果と共に取りまとめた。

調査の結果、韓国の特徴は、教職スタンダードが存在しない中にあっても、教員の主体性・多様性を重視したCPDが実現できている点にみられた。

韓国では、入職前の教員養成課程において厳しい選抜が存在し、競争を勝ち抜いた優秀な人材が教職に就いている。社会的にも教職の人気は高く、教職志望者は多い。すなわち、教員確保の点で大きな課題は存在せず、優秀な人材を必要数採用できている状態にあると言える。政策決定者も教員に高い信頼を寄せており、教職スタンダードを導入・規定することで教員の資質能力を底上げする必要性は感じていないようであった。むしろ、教職スタンダードを導入することで、教員の専門性開発が教職スタンダードありきとなり、結果として教員の序列化・画一化を招くことを憂慮していた。

こうした認識は、近年のCPD政策においてもみられる。「中央政府による政策方針提示―地方公共団体による政策運用・実行」という基本構造の中で、地方公共団体の裁量が高まるに伴い、学校現場等で行われていた自律研修の公式化・オーダーメイド型研修の拡大が進んでいるが、これは教員の主体性を重視し、教員研修プログラムにおいても教員のニーズを積極的に反映していこうとする動きと理解できる。

一方、国家公務員という安定した身分を理由に教職を志望する者の増加、一定資格到達後に研修受講を促す仕組みの不在、専門性開発を評価する制度の機能不全など、学び続けることへのモチベーションが低い教員への対応は、韓国でも課題として浮上している様子がみられた。

上記の調査結果を踏まえて、日本が抱えるCPDに関する課題に対する示唆を導いた。まず、日本におけるCPD参加のモチベーション維持の課題は、その解決策として、韓国における自律研修の公式化・オーダーメイド型研修の拡大を参考にすることができる。日本でも既に、独立行政法人教職員支援機構や都道府県レベルで同様の取組は行われているが、こうした動きを全国的に拡大することが求められる。また、韓国では教員研修プログラムの開発において、現場経験を積んだ教育研究士・奨学士と呼ばれる職員が関与している。日本でも同様に、教員のCPDに対するモチベーションを維持向上するためには、指導主事などの現場と政策を接続することができる職員が一層活躍し、現場の実態を反映したCPD政策を展開することが有効だろう。

さらに、教員の多様性・主体性を重視したCPD政策を展開している点も、韓国から得られる示唆である。韓国では、政策決定者から教員への信頼と、現場の声を重視する姿勢を下支えとして、教職スタンダードを導入せず、教員の主体性・多様性を重視したCPD政策を展開している。都道府県レベルで教員育成指標を導入している日本とは状況が異なるものの、教職スタンダードによって教員の多様性が損なわれる可能性にも目を向けつつ、教員を信頼し、教員が主体的に学ぶことができるような方策を検討していくことが、今後の日本のCPD政策において求められるのではないか。

続きは全文紹介をご覧ください。

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公共経営・地域政策部
副主任研究員
鈴庄 美苗

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