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危機的妊婦への支援で母子の命を救う

2022/05/11
松井 望、家子 直幸、近藤 碧

1. はじめに1

日本の周産期医療は世界トップクラスといわれ、2020年の周産期死亡率は出産千対3.22と世界で最も低い水準を維持し続けるなど、医療の観点からみると母子の生命・健康の保護は高いレベルで確保されていると言える。他方、新生児の遺棄など痛ましい事案の報道も後を絶たず、0歳児の虐待死事例は年間20~30件前後で10年以上推移している3。この背景には、妊娠を受容できず、経済的・精神的・社会的な葛藤を抱える女性たちの存在があると言われている。

厚生労働省の報告4によると、令和元年度の虐待死事例(心中以外)の約5割が0歳児であり、その中でも生後24時間以内の日齢0日児の死亡(以下「0日児事例」という。)が高い割合を占め、その主要な要因の一つとして「予期しない・計画しない妊娠」が挙げられている。また、0日児事例では「母子健康手帳の未交付」や「妊婦健康診査未受診」のケースがほとんどであり、妊娠・出産に葛藤を抱えながらも公的制度や資源にアクセスせず、危機的な心理状況の中で孤独に出産をしている女性たちの状況が浮かび上がる。

こうした「危機的妊婦」への支援にあたっては、医療・保健だけでなく福祉分野での支援や、支援制度間の連携、そして女性の心理や将来に配慮した柔軟な対応が求められる。本稿では、「危機的妊婦」への支援について、先進的な取組事例を紹介しつつ、公的制度の枠組みを超えた支援の意義と課題を整理する。執筆にあたっては、危機的妊婦への支援に取り組んでいる以下の団体・施設に対してインタビューを行った。

<インタビューに御協力いただいた支援団体・施設>

インタビュー1

【支援団体名および御対応者】
一般社団法人ベアホープ 理事 兼 一般社団法人全国妊娠SOSネットワーク 理事 赤尾さく美氏
【団体の主な活動内容】
(ベアホープ)妊娠相談、特別養子縁組
(全国妊娠SOSネットワーク)予期せぬ妊娠をした女性と関わる専門職への研修、周知・啓発
【インタビュー実施時期】
2019年7月13日(2021年8月電子メールにて情報更新の確認実施)

インタビュー2

【施設名および御対応者】
社会福祉法人慈愛会 婦人保護施設「慈愛寮」 熊谷真弓氏
【施設の主な活動内容】
産前産後を一人で迎えることとなった女性とその児の自立支援
【インタビュー実施時期】
2019年10月29日(2021年8月電子メールにて情報更新の確認実施)

インタビュー3

【施設名および御対応者】
社会福祉法人福岡県母子福祉協会 母子生活支援施設「百道寮」 大神嘉氏
【施設の主な活動内容】
産前・産後母子支援事業(妊娠期からの相談支援)
【インタビュー実施時期】
2021年9月10日

続きは全文紹介をご覧ください。

1 当社は、厚生労働省の平成30年度子ども・子育て支援推進調査研究事業費補助金を受けて、「妊娠を他者に知られたくない女性に対する海外の法・制度に関する調査研究」を実施した。同調査は海外の法制度に焦点を当てたものであったが、同調査の結果も踏まえ、日本における支援の現状も把握すべきとの認識のもと、本レポートを執筆した。

2 「令和2年(2020)人口動態統計月報年計(概数)」第2表「人口動態総覧(率)の年次推移 (2-2)」

3 社会保障審議会児童部会児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第17次報告)」

4 同上

共生・社会政策部
主任研究員
家子 直幸

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