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2020年M&Aの実態調査~ポストコロナ時代を見据えたM&A戦略とは~

売上高1,000億円以上の企業では、 非中核事業の売却やDX・グローバル化実現のための買収への意欲が高い

2021/08/31

本調査は、目まぐるしく変化する社会におけるM&Aの潮流を把握するとともに、M&Aを成功させるために必要な取り組みや要因を明らかにすることを目的に国内企業約5,000社を対象に実施したものです。回答企業277社のうち約3分の1が年間売上高300億円~500億円、約3分の1が同500億円~1,000億円、約3分の1が同1,000億円以上となっていることから、企業の売上規模や業種による回答傾向の差異についても比較分析をおこないました。

1. 調査結果のポイント

(1)新型コロナウイルスの感染拡大がM&A実務に及ぼした影響

  • 相手方との面談は、8割超の企業がオンライン会議を利用。オンラインとリアル対面の使い分けが課題に。
  • デューディリジェンス(DD)において、特に売上高1,000億円以上の企業では、対象会社の「ITプラットフォームの状況」、「リモートワーク等を可能にする労務面・人事評価面等の制度対応の状況」、「従業員に対する感染防止対策の充実度」を重視する傾向。

(2)ポストコロナ時代を見据えたM&A戦略

  • これからのM&Aは、 「中核事業を強化するための買収」、「新規事業分野へ進出するための買収」、「今後中核事業へ成長させたい事業を強化するための買収」が主な狙いに。特に、売上高1,000億円以上の企業では、「DXを実現するための買収」、「非中核事業の売却」、「グローバル化を実現するための買収」にも意欲的。
  • 海外M&Aの候補地は、7割超が東南アジア。中でも、ベトナム、タイ、インドネシアが主たるターゲット。
  • 今後買収したい事業分野は、業種問わずIT・情報通信業を挙げる回答が多い。このうち、興味のあるテクノロジー分野としては、「AI・ビッグデータ関連」と「IoT関連」が7割を超えるが、業種ごとに興味のあるテクノロジー分野に特徴がみられた。
  • デジタルM&A(ITサービス、インターネット企業、ソフトウェア、関連ハードウェア企業へのM&A)に取り組んだ際に苦労した点としては、「適正な価格での買収」が筆頭に挙げられる。
  • デジタルM&Aを成功させるために必要なこととして、「技術力・ビジネスモデル・事業の将来性の適切な評価」が重要視されている。

(3)M&Aの具体的な取り組み

  • M&A戦略を策定している企業は半数に満たないが、売上高1,000億円以上の企業では5割超、売上高5,000億円以上の企業では約7割がM&A戦略を策定。
  • FA(フィナンシャルアドバイザー)を選定する際に重視する点としては、M&Aの実施件数が多い企業ほど、「実際に担当するディールヘッドの経験・力量」、「自社でのFA起用実績」を重視する。
  • PMI(買収後の経営統合作業)を進めるために、「中期経営計画の策定」、「情報システムの統合」などの施策をおこなうも、「企業文化の融合」、「買収先従業員のモチベーション向上」、「業務プロセスの見直し」などでは苦労している。売上高1,000億円未満の企業では、PMIに十分なリソースを充当できていない可能性がある。

(4)過去5年間のM&Aにおける成果

  • M&Aの実施件数が多い企業ほど、想定以上のシナジーを実現していることがわかった。
  • 国内M&Aについては、約7割の企業が期待どおり、もしくは期待以上の成果があったと回答。
  • 海外M&Aについては、約6割の企業が期待どおり、もしくは期待以上の成果があったと回答。
  • 成果について期待通り、もしくは期待以上の成果があったと回答した企業が、M&Aを成功させるために重視している点として、①自社の戦略に合致する買収対象企業の要件を予め定義しておくこと、②PMIは遅くともDD実施期間中には着手することが挙げられる。

2.  調査概要

(1)調査対象 全国の上場企業(新興市場含む)及び未上場有力企業 約5,000社
(いずれも「単体売上高300億円以上」の企業を抽出)
(2)調査時期 2020年9月
(3)調査手法 調査票郵送方式とウェブ回答を併用
なお、調査票の発送及び回収、データ入力作業については株式会社東京商工リサーチに委託
(4)有効回答数 277社(回収率:5.6%)
(5)調査項目 Ⅰ 新型コロナウイルスが貴社のM&Aに与える影響について
Ⅱ デジタルM&Aに関するご意向について
Ⅲ M&Aに関するお考えと取り組みについて
(6)調査結果の表示方法

①調査結果は次のように表示する。
・回答企業数を回収企業総数で除した百分比(%)
・回答企業数を集計区分企業総数で除した百分比(%)

②百分比(%)は端数処理の関係上、内訳の合計(100%)と一致しない場合がある。

③複数回答可の設問については、集計対象企業総数に対する百分比(%)の合計が100%を超える場合がある。

【図表1 調査回答企業のプロファイル】

グラフ 調査回答企業の割合

(出所)当社作成

3. 調査結果

(1)新型コロナウイルスの感染拡大がM&A実務に及ぼした影響

① M&A実務におけるオンライン会議の利用実態
「状況次第でオンライン会議を利用する場合もある」とする企業が過半数を占め、「相手方が許容するのであれば、オンライン会議を利用するようにしている」とあわせて、8割超の企業がオンライン会議を利用するとしている。

【図表2  M&Aにおいて相手方との面談を実施する際、オンライン会議・電話会議をどの程度利用するか】

グラフ 調査回答企業の割合

(出所)当社作成

②デューディリジェンス(DD)で新たに加えた、または重要度が増した検討ポイント
「状況次第でオンライン会議を利用する場合もある」とする企業が過半数を占め、「相手方が許容するのであれば、オンライン会議を利用するようにしている」とあわせて、8割超の企業がオンライン会議を利用するとしている。

【図表3 新型コロナウイルスの流行を踏まえ、デューディリジェンス(DD)で新たに加えた、または重要度が増した検討ポイント(売上規模別)】

グラフ 新型コロナウイルスの流行を踏まえ、デューディリジェンス(DD)で新たに加えた、または重要度が増した検討ポイント(売上規模別)

(出所)当社作成

(2)ポストコロナ時代を見据えたM&A戦略

①ポストコロナ時代を見据え今後取り組んでいきたいM&A
全体的に「中核事業を強化するための買収」、「新規事業分野へ進出するための買収」、「今後中核事業へ成長させたい事業を強化するための買収」とする回答が多かった。
規模別にみると、売上高1,000億円以上の企業では、「DX(デジタルトランスフォーメーション)を実現するための買収」、「非中核事業の売却」、「グローバル化を実現するための買収」といった回答の割合が相対的に高いことが特徴的である。

【図表4 ポストコロナ時代を見据えて今後取り組んでいきたいM&A(売上規模別)】

グラフ ポストコロナ時代を見据えて今後取り組んでいきたいM&A(売上規模別)

(出所)当社作成

②海外でM&Aを検討している地域・国
東南アジアの割合が7割以上と圧倒的に高く、続いて北米、東アジアとなっている。具体的にM&Aを検討しているアジア地域の国としては、ベトナムとタイを筆頭に、次にインドネシア、中国と続く。

【図表5 海外M&Aを検討している地域】

グラフ 海外M&Aを検討している地域

(出所)当社作成

【図表6 アジアの中で海外M&Aを検討している国】

グラフ アジアの中で海外M&Aを検討している国

③ポストコロナ時代を見据え今後買収したい事業分野
ポストコロナ時代を見据えて今後買収したい事業分野(業種)については、各業種とも概ね同業種の割合が最も高いが、次いでIT・情報通信業との回答が最も多かった。
また、IT・情報通信業のうち、興味のあるテクノロジー分野については、全体としては「AI・ビッグデータ関連」と「IoT関連」が7割を超え、これらの技術を持った企業の買収に対する関心の高さがうかがえる。
業種間で比較してみると、以下のような特徴がみられる。

  • 総合工事業・設備工事業では、「スマートシティ関連」、「サービスロボット・ドローン関連」の割合が相対的に高い。
  • 製造業でも「スマートシティ関連」の割合が相対的に高い。
  • 物流・情報サービス業では「サイバーセキュリティ関連」や「クラウド・データセンター関連」、「サービスロボット・ドローン関連」の割合が相対的に高い。
  • 卸売業では「EC・インターネット広告関連」、「ネットワーク関連」の割合が相対的に高い。
  • 小売業では「動画・音楽配信関連」、「モバイル向けアプリ関連」、「EC・インターネット広告関連」の割合が相対的に高い。
  • 金融・保険業では「モバイル向けアプリ関連」、「EC・インターネット広告関連」、「ブロックチェーン関連」、「サイバーセキュリティ関連」、「クラウド・データセンター関連」、「AR・VR関連」の割合が相対的に高い。

【図表7 買収対象として興味のあるテクノロジー分野(業種別)】

グラフ ポストコロナ時代を見据えて今後取り組んでいきたいM&A(売上規模別)

(出所)当社作成

④デジタルM&Aで苦労した点と成功させるために必要な点
デジタルM&A(ITサービス、インターネット企業、ソフトウェア、関連ハードウェア企業へのM&A)に取り組んだ際に苦労した点としては、「適正な価格での買収」、「技術力・ビジネスモデル・事業の将来性の適切な評価」、「事業計画の精査」が5割前後を占めている。一方、デジタルM&Aを成功させるために必要な点は「技術力・ビジネスモデル・事業の将来性の適切な評価」が7割を超える。

【図表8 デジタルM&Aに取り組んだ際に苦労した点】

グラフ デジタルM&Aに取り組んだ際に苦労した点

(出所)当社作成

【図表9 デジタルM&Aを成功させるために必要だと考える点】

デジタルM&Aを成功させるために必要だと考える点

(出所)当社作成

(3)M&Aの具体的な取り組み

①M&A戦略策定の有無
M&A戦略(M&Aの目的と、ターゲット選定の基準を明確にしたもの)を策定している企業は、全体の半数に満たなかった。ただし、規模別にみると、売上高1,000億円以上5,000億円未満の企業では約5割、売上高5,000億円以上の企業では約7割がM&A戦略を策定している。

【図表10 M&A戦略の策定の有無(売上規模別)】

M&A戦略の策定の有無(売上規模別)

(出所)当社作成

②FA(フィナンシャルアドバイザー)を選定する際に重視する点
全体では「実際に担当するディールヘッドの経験・力量」が最も多く、次いで「自社でのFA起用実績」、「FA報酬の水準」となっている。興味深いことに、M&Aの実施件数が多い企業ほど、「実際に担当するディールヘッドの経験・力量」、「自社でのFA起用実績」を重視する傾向にある。

【図表11 FA(フィナンシャルアドバイザー)を選定する際に重視する点(M&A実施件数別)】

FA(フィナンシャルアドバイザー)を選定する際に重視する点(M&A実施件数別)

(出所)当社作成

③買収後の統合作業(PMI)を進める上で取り組んだ施策
全体では「中期経営計画の策定」、「情報システムの統合」、「経営ビジョンの策定」の割合が高い。ただし、売上高1,000億円未満の企業では、総じて各施策の実施割合が低くなっており、PMIに十分なリソースを充当できていない可能性がある。

【図表12 買収後の統合作業(PMI)を進める上で取り組んだ施策(売上規模別)】

買収後の統合作業(PMI)を進める上で取り組んだ施策(売上規模別)

(出所)当社作成

④PMIを進める上で苦労した点
全体では「企業文化の融合」、「買収先従業員のモチベーション向上」、「業務プロセスの見直し」の割合が高い。売上高1,000億円以上の企業では、「経営ビジョンの共有」を挙げた企業も多い。

【図表13 PMIを進める上で苦労した点(売上規模別)】

PMIを進める上で苦労した点(売上規模別)

(出所)当社作成

(4)過去5年間のM&Aにおける成果

①シナジーの実現度合い
M&Aの実施件数が5件以上となると、想定以上のシナジーが生まれたとの回答の割合が相対的に高くなっている。特に、「販売チャネル相互活用による売上拡大」、「購買力向上による仕入コスト削減」、「営業拠点・店舗の統廃合によるコスト削減」といった項目で、その傾向が顕著にみられた。

【図表14 過去5年間のM&Aにおいて、想定以上のシナジーが生まれたもの(M&A実施件数別)】

過去5年間のM&Aにおいて、想定以上のシナジーが生まれたもの(M&A実施件数別)

(出所)当社作成

②国内M&Aの成果
過去5年間の国内M&Aについては、「期待を上回る成果が得られている」、「ほぼ期待どおりの成果が得られている」を合わせると約7割の企業が期待した成果があったと感じていることが分かる。
また、国内M&Aの成果とPMIの検討開始時期との関係を分析したところ、「期待を上回る成果が得られている」、「ほぼ期待どおりの成果が得られている」と回答した企業の約6割が、PMIの検討開始時期について「基本合意を締結するよりも前」、「DD実施期間中」と回答している。

【図表15 過去5年間の国内M&Aの成果】

過去5年間の国内M&Aの成果

(出所)当社作成

【図表16 過去5年間の国内M&Aの成果とシナジー実現の施策(PMI)の検討の開始時期の関係】

過去5年間の国内M&Aの成果とシナジー実現の施策(PMI)の検討の開始時期の関係

(出所)当社作成

③海外M&Aの成果
過去5年間の海外M&Aについては、「期待を上回る成果が得られている」、「ほぼ期待どおりの成果が得られている」を合わせると約6割の企業が期待した成果があったと感じていることが分かる。
また、海外M&Aの成果とPMIの検討開始時期との関係を分析したところ、「期待を上回る成果が得られている」、「ほぼ期待どおりの成果が得られている」と回答した企業の7割以上が、PMIの検討開始時期について「基本合意を締結するよりも前」、「DD実施期間中」と回答している。

【図表17 過去5年間の海外M&Aの成果】

過去5年間の海外M&Aの成果

(出所)当社作成

【図表18 過去5年間の海外M&Aの成果とシナジー実現の施策(PMI)の検討の開始時期の関係】

過去5年間の海外M&Aの成果とシナジー実現の施策(PMI)の検討の開始時期の関係

(出所)当社作成

④M&Aを成功させるために重視している点
国内M&Aの成果につき、「期待を上回る成果」、「ほぼ期待どおりの成果」であったと回答した企業は、M&Aを成功させるために重視している点として、7割近くが「自社の戦略に合致したターゲット先の選定」を挙げている。
海外M&Aの成果につき、「期待を上回る成果」、「ほぼ期待どおりの成果」であったと回答した企業は、M&Aを成功させるために重視している点として、6割が「自社の戦略に合致したターゲット先の選定」を挙げている点は国内M&Aと同様である。しかし、次に「中長期的な視点に基づいたM&A戦略」との回答が4割近くに及ぶ点は国内M&Aとは異なる。

【図表19 国内M&Aを成功させるために重視している点】

グラフ 国内M&Aを成功させるために重視している点

(出所)当社作成

【図表20 海外M&Aを成功させるために重視している点】

グラフ 海外M&Aを成功させるために重視している点

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