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With/Afterコロナにおける オンライン接客を活用した顧客接点の再構築

2021/09/13
渡邉 睦、山田 直人

〈要旨〉

新型コロナウイルスの感染拡大を受けてデジタル化の潮流は加速しており、リアル店舗での販売を主としている業態では、単なるコロナ禍への対応だけでなく、今後のデジタル社会における生き残りに向けた取り組みが進められている。そのなかでも、特にリアル店舗における接客の代替手法として注目を集めているのが「オンライン接客」である。

オンライン接客では、Web会議ツールを用いた画面接客を通じてリアル店舗と同様の消費体験を提供できる。オンライン接客は、まだ黎明期の手法ではあるが、購入意欲の高い顧客へのアプローチが効果的にできる顧客接点として今後普及していくと見込まれる。

このようなオンライン接客を導入する場合、単なるリアル店舗の代替手段として捉えるのではなく、チャネル戦略・顧客戦略の観点から取り組むべきである。従来の顧客接点を踏まえてオンライン接客はどのような位置づけにあり、どのように顧客との関係性を発展・維持させるのか、一方でリアル店舗(オフライン)はどのような価値を提供していくのか、オンラインとオフラインの両輪を見つめ直すことが求められる。

1. はじめに

新型コロナウイルスの感染拡大は飲食店のみならず、さまざまな業界に影響を与えている。業界・業態によって普及率に差はあるものの、対面での会話・接触を通じた感染を防止するためテレワーク化が急速に進んでおり、Web会議ツールを用いた社内・社外とのコミュニケーションが一般的な状況になりつつある。

このようななかでリアル店舗での接客を通じて商品・サービスを提供する企業は、EC化への販売モデルの転換等、ビジネスモデルの変革期を迎えている。本稿で紹介する「オンライン接客」はコロナ禍によって普及しつつある、非対面/非接触の接客手法である。しかし、単に接客の場がリアル店舗からオンラインに移行すると考えるのではなく、オンライン接客という新たな顧客接点の特徴を活かした顧客体験を検討する必要がある。

2. オンライン接客

(1)デジタル上の接客コミュニケーションの分類

デジタル上の接客コミュニケーションは、その目的や手法に応じてさまざまである。本稿では、これらを分類したうえで、考察対象とするオンライン接客」の位置づけを明確にしたい。

接客目的の観点では、「接客自体を目的とする」場合と「サービス提供を目的とする」場合に分かれる。前者は、購入に向けた情報提供や契約条件交渉のような商談、購入後のサポート等の接客コミュニケーションをオンライン上で提供するものである。一方、後者は、オンラインフィットネスやオンライン英会話等のように、購入後のサービス提供に付随した接客コミュニケーションであり、通常有料の接客サービスである。

このうち、前者の「接客自体を目的とする」コミュニケーションは、さらに3つのタイプに大別できる。

まず、オンライン上のチャット機能を通じた接客を行う「チャット型」である。たとえば、自然派コスメブランドのジョンマスターオーガニック1では、コロナ禍を契機にオンライン上で美容相談やカウンセリングを受けられるようにチャットツールを導入した。公式オンラインストアの顧客情報を照会し、購入履歴等の情報をもとにリアル店舗と同等の接客が実現できることを目指している。

次に、Web会議ツールのビデオ・音声機能等を用いて店舗と同等の顧客体験を提供する「画面接客型」である。たとえば、高価格な宝飾品を提供するスワロフスキー2では、オンライン上で接する顧客に対して事前にアンケートを実施し、顧客の要望等を把握したうえでパーソナライズされた接客を実施している。画面上でもブランドの特長が伝わるように背景や商品の映し方に工夫を凝らした結果、顧客満足度は80%以上、購入率は80%、平均単価はリアル店舗の約5倍となった。

そして、前述の「チャット型」や「画面接客型」と異なり、複数の顧客を対象にした接客手法として、動画配信を通じて商品・サービスを紹介する「ライブコマース型」がある。たとえば、三井不動産3では、ECモールへの誘導や商業施設への来店促進を目的に、運営する商業施設によるライブコマースを開始している。人気テナントのスタッフやインフルエンサーがライブコマースに出演し、商品を紹介する動画を配信した結果、通常のECサイトでは1~2%に留まるコンバージョン率が10%程度になったケースもある。

現在、各企業は上記で紹介した手法を、単体もしくはいくつかのサービスを組み合わせたデジタル上の接客コミュニケーションサービスを展開している。たとえば、三越伊勢丹4では、チャット型と画面接客型での接客および購入決済を1つのアプリケーションで完結できるサービスを提供している。これにより、商品に関する情報収集の段階から購入を決断するまでのカスタマージャーニーを一貫してサポートしている。

本稿では、これらの「購入前後の接客サービス」のうち、リアル店舗と同等の接客が求められる「画面接客型」を「オンライン接客」と位置づけて検討する。

【図表1】オンライン接客の分類

図 オンライン接客の分類

(出所)当社作成

(2)オンライン接客の利用意向

当社が2021年3月に実施したオンライン接客サービスに関する調査では、オンライン接客手法のうち、「画面接客型」に関する認知度は25%程度であり、実際に利用したことがある人は2.6%に留まっている。40代以降の中高年層と比べると20~30代の若年層が利用率は高く(図表2)、デジタルツールであることが世代間格差の要因と推察される。このようにオンライン接客自体は、現時点では黎明期にあるサービスといえる。

【図表2】オンライン接客サービス(アパレル等の小売)の利用意向(年代別)

グラフ オンライン接客サービス(アパレル等の小売)の利用意向(年代別)

(出所)当社にて調査・作成

3. オンライン接客の導入メリット

オンライン接客を導入することによって、消費者と導入企業さまざまなメリットを享受できる。

消費者は、店舗訪問が不要になり、移動の時間や手間がなくなる。また、オンライン接客では予約制を取り入れている企業が多い。そのため、リアル店舗で発生するような接客の順番待ちが無く、希望するタイミングに接客を受けられること、さらには自分から店舗スタッフに声をかけることが苦手な人にとってはその必要がない等、店舗スタッフとのコミュニケーションハードルが下がるという利点もある。消費者がこのようなオンライン化の利便性をメリットに感じ、従来のオフラインにおけるカスタマージャーニーに変化が生じている。

一方、導入企業では商品・サービスや導入するオンライン接客手法によって享受できるメリットが異なる。まず、購入意欲の高い消費者へのアプローチがよりしやすくなることが挙げられる。前述のスワロフスキー社の事例に限らず、リアル店舗と比べるとオンライン接客には購入意欲の高い見込み客が多いといえる。その理由は、リアル店舗にはウィンドウショッピングを目的とした購入意欲の低い見込み客層でも気軽に立ち寄れるが、オンライン接客は事前の予約が必要となり、利用のハードルが高くなるからである。さらにリアル店舗では見込み客の購入意欲の高低に関わらず店舗スタッフのリソースが割かれていたが、オンライン接客では購入意欲の高い見込み客層に注力することが可能になる。

次に、新規顧客の開拓が幅広く行えることが挙げられる。リアル店舗が近隣にない消費者にとっては、HPやECサイトの情報だけでは購入を決断できないケースもある。その場合、遠隔地にいても専門スタッフに相談しながら購入を検討できるオンライン接客は有効なチャネルであるといえる。また、オンラインショッピングやSNS等のデジタル上でのコミュニケーションの利用率が高い若年層に対してアプローチしやすくなるため、効果的な若年層の取り込みが見込める。但し、リアル店舗を全国展開している企業やコモディティ化された(カスタマイズ要素のない)商品・サービス、安価なものの場合は新規顧客の誘引効果は限定的である。

最後に、店舗スタッフ等の働き方改革を推進しやすくなるというメリットもある。導入するオンライン接客の手法次第ではあるが、店舗スタッフの在宅勤務が可能になる。たとえば、下着メーカーのワコール5ではアバターを活用したオンライン接客を導入することにより、在宅勤務化に取り組んでいる。

4. オンライン接客による新しい価値の提供に向けて

これまで紹介した通り、オンライン接客は単なるリアル店舗の代替手段ではなく、新たな顧客接点となっている。その点を踏まえた、チャネル戦略・顧客戦略のもとにオンライン接客を導入しなければならない。その際に留意すべきポイントは以下の通りである。

【図表3】顧客接点の全体像

図 顧客接点の全体像

(出所)当社作成

(1)購入までの消費行動を意識したオンライン接客の配置

企業にとって効果的に顧客接点を設けて、購入までの導線を設計することは、今に始まった考え方ではない。しかしアフターコロナの時代を見据えた今、オフラインを前提とした消費行動とそれに基づく顧客接点を見直すタイミングにあるといえる。

オンライン接客は、双方向性の強いデジタル(リモート)対応できるチャネルであり、顧客接点における「確認・検討フェーズ(特に購入意欲の高い顧客層が中心)」と「購入フェーズ」に位置づけることができる。これは他の顧客接点で、商品を検討したうえで、購入の最終判断を行う接点がオンライン接客であることを意味する。ここに至るまで、企業は顧客に対して、購入の判断材料に必要な情報やコミュニケーションを行うことで、オンライン接客の機能を十分に発揮できる。

オンライン接客の導入にあたり、顧客接点全体を設計する際には、割り当てることのできるリソースを十分に検討しなければならない。オンライン接客は店舗接客と異なり、基本的には1対1の対応となり、店舗側が複数の顧客対応を一度に出来ないため、対応人員の確保はもちろん、対応する顧客の絞り込みも重要になってくる。各顧客接点におけるKPI(重要業績評価指標)は、リソース配分のバランスも考慮した設定にしなければならない。オンライン接客のKPIとしては、対応する顧客数をはじめ、購入率や購入単価が挙げられる。KPIの設定においては、顧客のオンライン上の導線(たとえば、EC→チャット→オンライン接客)を意識することが重要である。

(2)オンラインを最大限生かした顧客との関係維持・発展

類似した商品・サービスが溢れるなかで、顧客エンゲージメント(企業と顧客との信頼関係)を構築することの重要性が増している。SNSの活用をはじめとした企業によるオンライン上でのマーケティング活動の浸透により、企業と消費者の関係は、より近接し、より共創的になってきている。企業は、オンラインのすべての顧客接点が、顧客との信頼関係を構築するためのコミュニケーションの場だという意識を持つことが重要である。

さらに、信頼関係の先には、企業が提供する商品・サービスのファンを育成していく必要もある。これまで、企業はファンクラブ等の形で、ロイヤリティの高い顧客を取り込み、コアな情報を提供してきた。企業によっては、ファンが集うリアルなイベントを実施する等、ファンコミュニティを活性化し、顧客の声を集めるような取り組みも行われている。

コロナ禍で注目が高まっているオンラインサロン(オンライン上の会員コミュニティ)を企業が活用することも考えられる。企業が顧客のなかから、その企業のアンバサダーを育成する等、新しい商品を共創する場として期待できる。オンラインがベースにあるが、ファンクラブよりも参加型の特性がある点や、定員制を敷くことによる特別感を醸成できる点が特長といえる。

(3)リアル店舗ならではの価値創造

コロナ禍は、感染リスクの観点から、消費者がリアル店舗に行くことのハードルを上げ、その反動として、オンラインで完結する消費を確立したという見方もできる。コロナ禍以前から、ショールーミング(店舗で確認し、ECで購入)やウェブルーミング(EC等で確認し、店舗で購入)といった消費行動が定着していた。さらに、こうしたオムニチャネル化やOMO(Online Merges with Offline)が進むなかで、リアル店舗の価値を再構築する動きがあったが、コロナ禍はさらにこれを加速させたといえる。

リアル店舗の価値は、商品をその場で手に入れることができる即時性や売れ筋・トレンドを押さえた品揃えの良さが挙げられる。しかし、これらはECが代替しつつある「モノ(商品)」軸の価値であるといえる。これからのリアル店舗の価値を再構築していくうえで重視すべきは、ECでは代替が難しい「コト(体験)」軸の価値である。

「コト(体験)」軸を構成する要素には、エンターテインメント性、参加性、探索性等が挙げられ、五感をフルに働かせ、偶発的な発見を期待できる場にこそ、リアル店舗の付加価値がある。近年、実際に、その場での販売は行わない体験型店舗も生まれている。ECで代替できる機能をそぎ落とし、リアル店舗に求められる機能に特化することも、十分に検討の余地がある。

5. おわりに

コロナ禍における強制的なオンラインへのシフトは、顧客の消費行動にも大きな変化をもたらしたといえる。また、消費者がオンラインの利便性、実用性を実感してしまった以上、With/Afterコロナにおける消費行動として定着し、それに対応するための手法として、オンライン接客を導入する企業は増えていくと考えられる。その際には単なる顧客接点の追加と捉えるのではなく、「購入までの消費行動を意識したオンライン接客の配置」、「オンラインを最大限生かした顧客との関係維持・発展」、「リアル店舗ならではの価値創造」といったポイントを押さえて、オンラインとオフラインそれぞれが持つ価値を発揮できるようにすることが重要になるだろう。

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渡邉 睦

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