ジョブ型雇用におけるリスキリング施策~事例にみるリスキリングの検討ポイント~

2023/03/29 諏訪内 翔子、三城 圭太
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岸田総理大臣が掲げた総合経済対策の中に「人への投資」が盛り込まれる等、リスキリング(学び直し)への注目度はますます高まっています。一方で、バズワード[]として企業人材育成のあらゆる文脈で使用されており、施策の対象・内容もさまざまです。そのため、自社として何をどのように行うべきか悩んでいる経営者・担当者も多いことでしょう。

そこで本コラムでは、ジョブ型雇用を採用している企業での事例を挙げながら、リスキリングの検討ポイントを紹介します。

リスキリングとは

そもそも「リスキリング」とは何でしょうか。リスキリングは“re-skilling”であり、本来的には、事業ポートフォリオの転換やDX化等によって業務内容が大きく変化することが想定される領域において、新たなスキルを習得するようなケースが該当します。

一方で、新聞記事等では、新しい業務が追加された際に行う部分的なインプット、若手社員に向けたIT教育投資、英語学習等に対しても「リスキリング」と表現するケースがみられます。そのため、広義的に捉えれば、事業戦略の実現に必要な知識・スキルを保有する人材を増やすナレッジマネジメントの取り組み全般も「リスキリング」といえるでしょう。

ただ、自社で施策を導入するうえで重要なのは、従来の「人材育成」と何が違うのか、どの施策がリスキリングといえるのか、という名称や分類方法の議論ではありません。事業戦略の実現のために必要な人材要件を明確化し、そのためにリスキリングが重要な取り組みであることを社員に分かりやすく発信していくことです。そうすることで、リスキリングの対象となるべき社員はその重要性を適切に認識し、よりモチベーションを上げてスキル習得に取り組むことができるでしょう。

リスキリングの事例~ジョブ型雇用を採用している企業を中心に~

ジョブ型雇用[]においては、通常、ジョブディスクリプションでポジションごとに必要な経験・知識・スキル等が定められています。キャリアアップは基本的に新しいポジションに就くことによって実現するため、新しいポジションに必要な知識・スキルを学ぶリスキリングは、ジョブ型雇用を機能させる重要なピースのひとつだといえます。

下表は、ジョブ型雇用の採用を公表している企業を中心に、リスキリングの事例をまとめたものです[]。

リスキリング導入事例
リスキリング導入事例
(出所) 各社公式HP等の公開情報より、当社作成

ジョブ型雇用では、社員一人ひとりが現在または今後目指すポジションに応じて学ぶべき内容が異なるため、一律の階層別研修等ではなく、個人が自由に学習コンテンツを選択・受講できるe-learning等の学習プラットフォームの整備は有効だといえます。特に表中No1、2の企業は、経営方針として全社的にDX化を推進することを掲げており、今後業務内容が大きく変わりうる社員も相応にいることが想定されます。さらに、一般論として、役職・職責に求められる付加価値に対して、中高年層のスキルが陳腐化している懸念があるとすれば、学び直しが必要となる対象はさらに広がり、自社でプラットフォームを開発・導入する費用対効果は高いといえます。

また、会社に籍を置きながら大学院等で学べるよう、数年間の休職制度を設けている企業もあります。高い専門性を新たに習得する必要がある場合、働きながら新しい知識・スキルをインプット(場合によっては既存の知識・スキルをアンラーニング)するには相当の労力が必要です。集中して学ぶ機会を提供することは、社員の中長期的な成長および会社としてのナレッジマネジメントに資する取り組みといえるでしょう。

まとめ

リスキリングの社内検討にあたっては、自社の事業戦略に基づく組織の将来像、それを踏まえて求められる人材の質・量を定義することが重要です。たとえば、特定領域において数人の高度専門人材を育成することが必要ならば、大学院等への進学支援や、社外プログラムへの派遣が効果的かもしれません。一方で、数百人単位で新しい知識・スキルのインプットが必要な場合は、新しい研修や学習プラットフォームの開発が有効でしょう。リスキリングの目的・ゴールによって取りうる施策は変わるため、まず、それらについて自社内で十分に議論・目線合わせを行うことが重要です。

【関連ドキュメント】
ジョブ型雇用部分導入のメリット①高度専門職の事例
ジョブ型雇用部分導入のメリット②シニア人材の事例

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【資料ダウンロード】ジョブ型人材マネジメントのための職務等級人事制度ソリューション


[] 流行語的に広く使われているが、意味があいまいな専門用語
[] ジョブ型雇用の詳細定義や解釈、運用のポイントについては当社レポート(自社の状況に合わせた ジョブ型人材マネジメント導入に向けたヒント)を参照されたい
[] 公開情報や記事等で、全社員あるいは一部の社員に職務等級人事制度等のジョブ型雇用の施策を導入していると類推できる企業を中心にピックアップしている

執筆者

  • 諏訪内 翔子

    コンサルティング事業本部

    組織人事ビジネスユニット HR第3部

    マネージャー

    諏訪内 翔子
  • 三城 圭太

    コンサルティング事業本部

    組織人事ビジネスユニット HR第3部

    プリンシパル

    三城 圭太
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