任意の指名・報酬委員会の開示(2023年)~(2)活動状況~

2024/03/19 工藤 治、石本 来恋
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本コラムでは、任意の指名・報酬委員会の開示内容に関する調査結果に基づき、その傾向を解説します。第1回は、任意の指名委員会・報酬委員会(以下、任意の委員会)の設置状況および委員構成を紹介しました(前回のコラムはこちら)。第2回は、任意の委員会の活動状況(開催頻度、出席状況、検討内容、運営における外部専門家の活用状況)について取り上げます。

調査概要

集計対象企業

2022年:プライム市場・スタンダード市場それぞれの時価総額上位100社(2022年6月30日時点)のうち、任意の委員会を設置[ 1 ]しており、かつ決算日が2022年3月31日の企業[ 2 ](プライム:54社、スタンダード:35社)
2023年:プライム市場・スタンダード市場それぞれの時価総額上位100社(2023年6月30日時点)のうち、任意の委員会を設置しており、かつ決算日が2023年3月31日の企業(プライム:54社、スタンダード:39社)
なお、対象企業の有価証券報告書[ 3 ]を基に調査しました。

調査項目

2023年1月31日に公布・施行された「企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令」[ 4 ] (以下、改正開示府令)で新たに開示が求められた「活動状況」について集計しました。具体的な調査項目は、開催頻度、出席状況、検討内容としました。加えて、任意の委員会における審議の客観性確保や充実化のための一つの手段でもある、外部専門家の活用状況についても集計しました。

集計結果

(1)任意の委員会に関する「開催頻度」「委員の出席状況」の開示状況

開催頻度【図表1】および出席状況【図表2】の開示率は、プライム・スタンダードの両方で2022年に比べて開示率が向上しており、開示府令改正の影響を受けている可能性がうかがえます。ただし、プライムの開示率が約100%であるのに対し、スタンダードは70%~90%にとどまっており、スタンダードの中には改正開示府令の開示基準に準拠していない企業が確認できます。

【図表1】開催頻度の開示状況[ 5
開催頻度の開示状況
(出所)当社作成
【図表2】委員の出席状況の開示状況[ 5
委員の出席状況の開示状況
(出所)当社作成

(2)任意の委員会における「具体的な検討内容」の開示状況

指名・報酬に関する具体的な検討内容の開示状況【図表3】についても、開催頻度・出席状況と同様、スタンダードに比べ、プライムの方がより多くの企業が開示していました。ただし、開示率は約80%~90%で、開催頻度・出席状況に比べて開示割合は低めです。
「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」に委員会の活動状況を記載することが望ましい、という考え方は、改正開示府令の施行前からさまざまな形で言及されてきました。経済産業省の「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針」[ 6 ]でも、以前から「委員会の構成・委員の氏名や、審議事項、開催実績等の運用実態に関して、対外的に情報発信することが有益である」とされています。改正開示府令の初年度において市場区分による開示率の差が起きている理由は、プライムを中心として、情報開示の充実による透明性の確保に積極的だった企業が存在し、すでに開示を進めていたためと考えられます。

【図表3】具体的な検討内容の開示状況[ 7 ][ 8
具体的な検討内容の開示状況
(出所)当社作成

(3)任意の委員会の運営における外部専門家の活用

集計対象企業のうち、任意の委員会の運営において外部専門家を活用していることを開示している比率は、プライムがスタンダードを上回っています【図表4】。特に報酬領域における外部専門家の活用比率の方が指名領域よりも高い傾向にあります。
なお、指名領域における外部専門家の具体的な活用内容は、「実効性評価に外部を活用」「一部の経営執行役員に対して外部によるアセスメントを実施」「外部人材の調査結果について報告を受ける」などです。報酬領域における具体的な活用内容は、「外部データを参照(任意の委員会が直接参照しているかは不明な場合も含む)」「外部からの助言/支援を受ける/アドバイザー起用」「委員会に同席する」「実効性評価に外部を活用」などです。このように、企業によって外部専門家の活用方法はさまざまですが、審議の客観性担保が目的である点は共通していると考えられます。
また、報酬領域は定量的に検討しやすいテーマであるため、外部専門家の活用比率が高くなっていると考えられます。

【図表4】任意の委員会の運営における外部専門家の活用状況[ 7 ][ 9
任意の委員会の運営における外部専門家の活用状況
(出所)当社作成

まとめ

改正開示府令を受けて、任意の委員会の活動状況の開示は進んでいますが、企業によって差があります。スタンダードよりもプライムの方が開示は進んでおり、今後は特にスタンダードにおけるさらなる取り組みが必要です。
また、任意の委員会の運営における外部専門家の活用について開示する企業は限られていますが、その目的である委員会の審議の客観性確保や充実化を目指し、積極的に活用するという方策も検討するのが良いでしょう。

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1 ] 法定の委員会を設置している会社(指名委員会等設置会社)は調査対象外であり、監査役設置会社および監査等委員会設置会社について調査を行った
2 ] 改正開示府令は2023年3月31日以後に終了する事業年度の有価証券報告書および有価証券届出書から適用されるため([ 4 ])
3 ] 各年6月30日時点の最新の有価証券報告書を確認した
4 ] 『「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案に対するパブリックコメントの結果等について』(2023年1月31日)(最終確認日:2024年3月4日)
5 ] 指名委員会・報酬委員会を分けて設置している、もしくは片方だけを設置している企業を「任意の指名委員会」・「任意の報酬委員会」のn数として集計。指名委員会と報酬委員会をまとめて設置している企業については、「任意の指名報酬委員会」のn数として集計した
6 ] 「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針」(2022年7月19日)(最終確認日:2024年3月4日)
7 ] 任意の指名委員会と任意の報酬委員会をまとめて設置している企業については、指名および報酬の両方のn数として集計した
8 ] 有価証券報告書において、当年度に検討した具体的な内容の記載がある企業を集計した
9 ] 2023年データのみを調査対象としている

執筆者

  • 工藤 治

    コンサルティング事業本部

    組織人事ビジネスユニット HR第3部

    シニアマネージャー

    工藤 治
  • 石本 来恋

    コンサルティング事業本部

    組織人事ビジネスユニット HR第3部

    ビジネスアナリスト

    石本 来恋
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