RCEPの概要と日本への影響~日本、中国、韓国の間で進む関税削減~

2020/12/23 中田 一良
調査レポート
海外マクロ経済

○ ASEAN加盟10か国、日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インドの16か国が参加して2013年に交渉が開始された地域的な包括的経済連携(Regional Comprehensive Economic Partnership、RCEP)は、インドは離脱したものの、交渉が妥結し、2020年11月に署名された。RCEPが発効すれば、包括的かつ先進的な環太平洋パートナーシップ(Comprehensive and Progressive Trans-Pacific Partnership、CPTPP、通称TPP11)と並んでアジア太平洋地域における大規模な自由貿易圏が誕生することになる。

○ RCEPは、関税削減のほかに、サービス、投資、知的財産、電子商取引、政府調達などルールに関する幅広い分野をカバーしている。RCEP全体の関税撤廃率(品目数ベ―ス)は91%であり、TPP11の関税撤廃率を下回っている。ルールに関しては、既存のルールを上回るものも含まれている一方、後発国に配慮したものもあり、質の高さよりも合意に達することを重視したことが窺われる。今後の見直しなどを通じて、いっそう質の高いものになることが期待される。

○ RCEPにより投資などに関して予見可能性や透明性を高めるルールが定められることで、域内のビジネス環境が改善し、直接投資が活発化する可能性がある。RCEP域内にはすでに多くのEPA/FTAが締結されているものの、RCEPは署名15か国をカバーするEPAであり、これまでに締結されたEPA/FTAでは関税の減免対象とならなかった品目がRCEPの枠組みの下では関税の減免対象となる場合もあると考えられる。

○ 日本はRCEPを通じて貿易相手国として規模の大きな中国、韓国とEPAを締結することになる。日本は、中国からの輸入の割合が高い衣類などで関税を最終的に撤廃する。中国、韓国の日本に対する関税削減の影響について、両国の日本からの輸入実績のうち金額が大きい品目を対象として試算すると、中国ではプラスチック製品、自動車部品や光学機器で、韓国では有機化学品やプラスチック製品で関税削減が進むと見込まれる。

○ RCEPにより域内の貿易・投資の自由化が進展すると見込まれるものの、現時点では発効時期が確定しているわけではない。ASEAN署名国のうち少なくとも6か国、非ASEAN署名国の少なくとも3か国が批准を終えれば、その60日後に発効することになっている。RCEP署名各国において国内手続きが迅速に行われ、すべての国が参加する形でRCEPが早期に発効することが期待される。

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