EUのEVシフト戦略~産業振興アプローチに転じたEU

2021/06/17 土田 陽介
調査レポート
海外マクロ経済
  • 欧州連合(EU)で電気自動車(EV)の普及が進んでいる。新型コロナの感染拡大を受けた景気悪化の下でもEVの普及が進んだ直接的な理由はCAFE規制(企業平均燃費規制)の強化にあるが、それ以外にもEUの執行部局である欧州委員会は、供給と需要の両面でEVシフトの支援策を講じている。
  • とりわけ車載用バッテリーの研究開発助成という供給サイドの支援策に関しては、フォンデアライエン欧州委員長が掲げる「循環型経済」構想が強く反映されており、企業による自由な競争を重視してきた欧州委員会が産業振興的なアプローチに転じたという点で、EUの産業政策史上、非常にエポックメイキングな性格を持っている。
  • 欧州委員会は将来的に車載用バッテリーを域内で内製化したい模様だが、世界的に東アジア系企業の優位が揺るがない環境にもかかわらず欧州委員会が車載用バッテリーの域内内製化を志向すること自体、自由貿易の原則を重視する自らのスタンスと矛盾する。
  • それに車載用バッテリーの内製化に成功しても、グローバルな競争原理が働かなければ域内で生産された車載用バッテリーの価格は高止まりしてしまう恐れが大きい。そうしたバッテリーの価格を補助金で引き下げれば、それは世界貿易機関(WTO)ルールで禁止されているレッド補助金に相当する。
  • またそうしたバッテリーを搭載したEUのEVに対して、各国が対抗措置として輸入関税をかける事態も予想される。産業覇権の掌握や循環型社会の構築を目指すためのEUの取り組みが、かえって各国を刺激し、世界的な保護主義の台頭をもたらさないか警戒される。

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