所得階層別にみた個人消費の特徴~コロナ禍の動向と物価上昇局面での当面の見通し~

2022/10/20 中田 一良
調査レポート
国内マクロ経済
変化を捉える【経済】
  • 消費支出は、新型コロナウイルスの感染拡大以降、感染状況を反映する形で増減を繰り返したものの、2022年3月にまん延防止等重点措置がすべての地域で解除されて以降、回復した。感染拡大以降の品目別消費支出の動向をみると、家具・家事用品、住居などは感染拡大前と比較すると支出水準が上昇したが、その背景には新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて在宅時間が長くなったことがあると考えられる。被服及び履物、旅行などが含まれる教養娯楽などは減少しており、その要因としては外出機会が減少したことがあげられる。
  • 新型コロナウイルス感染拡大以降の消費支出の動向を所得階層別にみると、いずれの所得階層においても消費支出は感染状況を反映する形で増減を繰り返す傾向がみられた。もっとも、その程度には違いがみられ、2021年後半以降、所得水準が最も高い第5五分位は大きく増加した一方、第3五分位、第4五分位は低迷が続き、増加に転じたのは2022年に入ってからであった。第3五分位、第4五分位では被服及び履物、教養娯楽などへの支出が低迷し、消費支出の回復が遅れる形となった。
  • 足元では食料品やエネルギーを中心に物価が上昇しており、今後の消費支出に与える影響が懸念される。勤労者世帯の所得状況をみると、物価動向を考慮した実質可処分所得は足元では減少傾向にあるものの、所得水準が高い階層などでは、新型コロナウイルス感染拡大前の水準を上回っている。また、可処分所得に占める消費支出の割合である平均消費性向は感染拡大前の水準を下回っている。
  • 所得階層別の実質消費支出を試算すると、足元では物価上昇などを背景に所得水準が最も低い第1五分位では減少傾向にあるものの、他の所得階層ではこれまでのところは明確な減少傾向を示しておらず、消費支出の回復が遅れていた第3五分位、第4五分位では増加傾向で推移している。また、10月から開始されている「全国旅行支援」や住民税非課税世帯への1世帯あたり5万円の給付金といった政策支援も消費支出の押し上げや下支えに寄与すると考えられる。こうしたことに加えて、実質可処分所得の水準なども考慮すると、実質消費支出は当面は増加する可能性がある。
  • 「全国旅行支援」の実施期間は12月までとされており、終了後には旅行向け支出は減少し、消費支出押し上げ要因が剥落すると見込まれる。そのような中、今後、物価上昇率が一段と高まり、所得の増加ペースが物価上昇に追いつかない状況が続く場合には、実質可処分所得が減少し、実質消費支出が減少する可能性が出てくるだろう。

続きは全文紹介をご覧ください。

テーマ・タグから見つける

テーマを選択いただくと、該当するタグが表示され、レポート・コラムを絞り込むことができます。