大企業の業況判断は最悪期を脱するも、コロナの影響は残り、回復ペースは鈍い
本日発表された日銀短観(2020年9月調査)における大企業の業況判断DI(最近)は、新型コロナウイルス感染拡大の影響が一巡し、製造業、非製造業とも改善に転じた。もっとも内訳をみると、「良い」と回答した企業の割合は変わらない中、「悪い」と回答した企業の割合が低下したことによる改善であり、今回の結果はコロナ禍からの積極的な回復を意味するわけでなく、あくまでも経営環境が最悪期を脱したことを示すに過ぎない。
大企業製造業は、前回調査(2020年6月調査)から7ポイント改善の-27となった。コロナ禍で低迷していた原油価格の上昇を背景に石油・石炭で大きく改善したほか、5Gの導入やテレワークへの対応が進む中、半導体需要が上向いていること、さらに特別定額給付金の効果で家電需要が喚起されたことから、電気機械での改善が目立った。一方で自動車では、前回調査までの悪化が大きかったことを考慮すると、改善は小幅にとどまっており、製造業全体の景況感の改善が鈍かったことの一因となった。
大企業非製造業は、前回調査から5ポイント改善の-12となった。昨年10月の消費増税とコロナ禍の影響を脱した小売で大きく改善した一方で、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、前回調査までに大きく悪化していた運輸・郵便、対個人サービス、宿泊・飲食サービスでの改善は小幅にとどまった。旅行や外食など、人との接触を伴うサービス業では、依然としてコロナ禍の影響は残っていると考えられる。
先行きについては、大企業製造業では10ポイント改善の-17、大企業非製造業でも1ポイント改善の-11となった。製造業では、世界的に需要が回復している自動車を中心に改善が見込まれる一方、非製造業では新型コロナウイルスの感染状況がどのように推移していくか不透明である中で、経営環境の大きな改善は見通しにくく、改善は小幅となった。
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