今月のグラフ(2020年1月)米中関税合戦の勝者はどちらか

2020/01/07 中塚 伸幸
今月のグラフ
国内マクロ経済

米中の「第一段階の合意」が今月半ばに署名されるという。2018年7月に始まった両国の関税合戦は今般、「中国側が農産物の輸入拡大などの譲歩をする一方、米国側はこれ以上の関税賦課を停止し、発動済み関税の一部税率を引き下げる」という妥協をもって一応の休戦となった。貿易戦争に勝者なしと言われるが、これまでのところ双方ダメージを受け、痛み分けの面が多分にある。しかし、どちらかといえば「戦争」を仕掛けた米国の方が、分が悪いのではないか。

まず、そもそもトランプ大統領が目指したことは、関税によって貿易不均衡を是正し、米国内の製造業を復活させることであった。この点、たしかに米国の対中輸入は減少し、対中国の財の貿易赤字は今年1月から10月までの累計で約2,940億ドルと、前年に比べて15%縮小した。しかし図表1が示すように、中国からの輸入が減少する一方、アセアン、メキシコなどからの輸入は増加しており、その結果、輸入全体の減少はわずかにとどまる。米国全体の貿易赤字額も同じ10ヵ月の累計で前年からほぼ横ばいであり、中国からの輸出の相当部分がアセアン等からの輸出に振り替わったものと考えられる。結局、米国は欲しいものを海外から購入せざるを得なかった。

また、トランプ大統領は「中国が関税を負担した」と強弁するが、事実は異なる。もし、中国の輸出業者が関税による価格上昇分を吸収して(つまり利益を犠牲にして)値下げしていれば、米国の対中輸入物価は下落したはずである。しかし、図表2が示すように、中国からの輸入品物価は米国全体の輸入品物価とほぼ同じで2%程度しか下落しておらず、中国が輸出価格を大きく引き下げた形跡は乏しい。つまり関税の大半は米国の輸入業者と消費者が負担した。だからこそトランプ大統領は、スマートフォンなどを含む第四弾の残り1,600億ドルへの関税賦課を避けたかったのに違いない。・・・(続きは全文紹介をご覧ください。)

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