令和5年度 自治体経営改革に関する実態調査報告

2024/09/10 土方 孝将、鈴木 淳、大塚 敬、沼田 壮人、片平 春樹
地方自治体
自治体
総合計画
自治体経営
行政

国内外の社会・経済情勢がめまぐるしく変化する中で、地方公共団体においては、常に社会の潮流や将来動向を捉え、自律的な自治体経営を行うことが求められています。これに対する視座を地方公共団体に提供するため、三菱UFJリサーチ&コンサルティング自治体経営改革室では、全国の都道府県、市区を対象として、自治体経営の実態と課題に関する調査を平成28年度より実施しています。
昨今、人口減少と高齢化を背景とした税収の伸び悩みや福祉需要の増大、デジタル田園都市国家構想や自治体DX、生成AIの活用、ポストSDGs、働き方改革への対応など、地方公共団体の行財政運営を取り巻く環境は大きく変化しています。これからの時代に即し、持続可能な自治体経営に向けては、これまで以上に行財政運営の効率と質の向上を図っていくことが強く求められます。
こうした背景を踏まえ、本年度は総合計画、デジタル田園都市国家構想総合戦略への対応、行政評価、政策形成過程における市民参加、エビデンスに基づく政策形成(EBPM)、自治体のデジタル化(DX)、自治体SDGs、公務員の人材確保・働き方改革の実態と課題について把握・分析しました。

<調査結果概要>

■調査対象:全国の都道府県43団体、全市742団体、東京都特別区23団体、計808団体
         ※新潟県、富山県、石川県、福井県を除く全国都道府県・市区[ 1
■有効回答数(率):420団体(52.0%)[ 2
■総合計画について

  • 総合計画の構成は3層が多数派ではあるものの減少傾向にあり、2層とする割合が上昇している。
  • 重点プロジェクトは8割の団体が設定している。なお、積極的な予算付けを行う団体と行わない団体の割合は同程度である。
  • すべての施策に目標値を設定している割合が約6割となっており、定量的な目標値を設定していない割合は平成28年度以降減少傾向にある。
  • 「まち・ひと・しごと創生総合戦略」と「総合計画」を一体化する団体は増加傾向にあり、「デジタル田園都市国家構想総合戦略」は、総合計画とは別に独立して策定する割合が高い。

■行政評価について

  • 総合計画に記載の事務事業すべてを行政評価の対象としている団体は5割弱、施策すべてを行政評価の対象としている団体は5割強となっている。
  • 行政評価においては、多くの団体で定量的な評価指標を用いている。
  • 行政評価を予算編成に原則として反映している割合は低下しており、行政評価の結果を予算編成に活用していない割合は上昇している。
  • 内部評価に係る事務作業の負担が大きいとする団体が依然として多く、評価指標及び目標値の設定や、評価後の改善等を課題とする割合も上昇している。

■総合計画策定における市民参加手法について

  • 総合計画策定時には、ほぼすべての団体でパブリックコメントを実施し、市民アンケートの実施は9割弱となっている。
  • グラフィック・レコーディングの導入団体の割合は上昇している一方で、導入していない団体においては、その理由として人材の確保を挙げる団体が多くなっている。

■エビデンスに基づく政策形成(EBPM)について

  • EBPMへの関心は年々高まり、約3割が推進しているまたは具体的な検討を進めているものの、7割弱の団体は依然として具体的な検討を進めていない。
  • EBPMを推進している団体のうち、行政評価の仕組みに組み込んでいる団体は4割強である。
  • ロジックモデルの認知度は上昇し、ロジックモデルを作成している団体も増加傾向にある。
  • EBPM推進に向けては「手法・ノウハウの獲得」「庁内の理解不足」「庁内の人手不足」が課題として挙げられている。

■自治体におけるDXの推進状況について

  • 自治体DXに関連した取組として、行政手続きのオンライン化、オンライン会議の活用が9割を超えており、ペーパーレス化も進んでいる。
  • 生成AIは多くの団体で業務への活用が検討されており、既に行政内部の業務に導入している団体は2割弱である。

■自治体SDGsの取組について

  • SDGsに関する取組を「実施している」団体は8割を超え、ほぼすべての団体で既存計画へSDGsの概念等を盛り込んでいる。
  • 取組を推進する上での課題は、いずれの課題も過年度調査に比べ低下しているが、人手不足を指摘する団体が依然として多い。

■公務員の人材確保・働き方改革について

  • 職員の採用倍率が低下しており、人材の確保に向け、休暇取得や労働時間の改善など、多くの団体が働きやすい職場環境づくりに取り組んでいる。
  • 在宅勤務を実施しない割合が高くなっている一方で、在宅勤務を実施している団体における運用状況をみると、行政端末を用いて、団体のネットワークに接続して業務を行う環境の整備が進みつつある。

続きは全文紹介をご覧ください。


1 ] 本調査は令和6年1月5日に調査票を発送した。令和6年(2024年)1月1日に発生した能登半島地震により大きな被害が生じた4県下の団体に対しては調査票の送付を見送った。
2 ] 423団体から回答があったが、団体名無回答の3件は集計から除外した。

執筆者

facebook x In

テーマ・タグから見つける

テーマを選択いただくと、該当するタグが表示され、レポート・コラムを絞り込むことができます。