生活娯楽関連サービス業の現状と見通し~ワクチン接種開始で期待される「コロナの天井」の打破~

2021/03/29 藤田 隼平
調査レポート
国内マクロ経済
  • 新型コロナウイルスが日本国内で初めて確認されてから、1年あまりが経過した。この間、2度の緊急事態宣言の発出もあって日本経済は悪化したが、特に落ち込みが深刻となったのが、人と人との接触を避けるのが難しい対面型のサービスを提供する宿泊業や飲食サービス業といった生活娯楽関連サービス業である。
  • 1度目の緊急事態宣言下では、生活娯楽関連サービス業の経済活動はコロナ前の4~5割程度の水準にまで低下するなど、落ち込みが顕著だった。2020年末にはコロナ前の8割程度の水準にまで回復したが、年明けに2度目の緊急事態宣言が出された影響で、コロナ前の6~7割程度の水準にまで低下している。生活娯楽関連サービス業の需要が1%減れば、GDPは約0.1%減る計算で、日本経済にも小さくないインパクトをもたらす。
  • 3月21日に宣言が全国で解除されたことで、日本経済は正常化へ向かう見通しである。生活娯楽関連サービス業についても、当面は飲食店への時短要請が続くことから需要の急回復は見込めないものの、徐々に持ち直しへ向かうとみられる。もっとも、順調に持ち直していけるかは、今後の新型コロナの感染者数の動向と医療体制のひっ迫度合い次第である。
  • 医療体制のひっ迫度合いが経済活動の限界を決めるという意味で、日本経済は「コロナの天井」に直面している。この状況がいつ解消されるかにより、生活娯楽関連サービス業の回復の道筋は大きく左右される。状況を打破するゲームチェンジャーとして、新型コロナワクチンへの期待は大きい。特に重症化リスクが高いとされる高齢者への接種が済めば、新型コロナの感染者が増えたとしても、医療にかかる負荷はこれまでよりも抑制されるため、コロナの天井の解消に向けた大きな前進になると考えられる。
  • ただし、世界的な変異コロナウイルスの感染拡大は、懸念材料である。ワクチンが行き渡るには、ある程度の時間が掛かるとみられるため、変異ウイルスの感染拡大によって、仮にこれまで重症化リスクが高くないとされていた人々の重症化率が高まれば、ワクチン接種の遅れがコロナの天井に直面するリスクとなる。このため、生活娯楽関連サービス業としては、ワクチンの効果に期待しながらも、再び通常営業が制限されるリスクを念頭に、どんな場合でもビジネスを続けていけるよう、供給チャネルの多様化などの柔軟な対応を続けていくことが必要である。

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