高騰する国内の物価動向と当面の見通し~業種によって価格転嫁の度合いに温度差~

2022/08/24 藤田 隼平
調査レポート
国内マクロ経済
  • 現在、世界経済は歴史的な「物価高騰」に直面している。日本においても欧米ほどではないもののサプライチェーンの川上から川下に至るまで幅広く物価の伸びが高まっており、特に消費者物価の高騰が個人消費を中心に景気を冷え込ませるとの懸念は強い。
  • 今回の物価高騰は主に資源高と円安による輸入コストの増加によるものだが、コスト増に直面している国内企業の価格転嫁の動きには業種によって温度差があり、素材系の製造業や卸・小売業種では転嫁が比較的進んでいる一方、加工系の製造業やサービス業では遅れが見られる。
  • このため、今後も国内の物価が上昇を続けていくかは、①これまで価格転嫁が遅れていた加工系の製造業やサービス業において値上げが進むか、②物価高の主因である輸入コストが一段と増加するか、によるところが大きい。
  • ①については、企業の経営判断によるところも大きいが、足元で個人消費がコロナ前の水準を回復するなど需要の弱さは薄れつつあることから、徐々に価格転嫁のしやすい環境が整っていくと考えられる。また、②については、原油価格の上昇が一服し、円安にも揺り戻しの動きが生じるとみられることから、輸入コストの増勢は一服へ向かうと考えられる。
  • 以上を踏まえると、需要の回復を背景にこれまで価格転嫁が遅れていた加工系の製造業やサービス業においても値上げが進んでいく中、国内の物価は上昇傾向が続くと考えられる。ただし、輸入コストの増加のペースが落ち着いていくことから、企業物価や消費者物価の前年比の伸びは、次第にピークアウトしていく見通しである。
  • 特に消費者物価について、上昇のペースは落ち着いていくものの、足元のように物価の上昇が賃金の上昇を上回る状況が長引けば、コロナ禍からの需要の回復に水を差す恐れがある。政府には、引き続き景気の下振れリスクに十分な注意を払いつつ、状況によっては逐次、追加的な財政支援を検討していくといった柔軟な態度が求められよう。

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