取締役会スキルマトリックスの作成における確認点

2021/08/25 中山 尚美
Quick経営トレンド
組織・人事戦略

スキルマトリックスとは、取締役ごとの知識・経験等を表形式の一覧にしたもので、主に株主総会の招集通知に掲載されます。
2021年6月のコーポレートガバナンス・コード改訂により、上場企業に対し、取締役会スキルマトリックスの開示が求められることになりました。補充原則であるため、2022年4月から適用開始となる新市場区分では、プライム及びスタンダード市場の上場企業が対象です。改訂コードに基づく「コーポレートガバナンスに関する報告書」は、遅くとも2021年12月末日までの提出が求められています。
本稿では、スキルマトリックスを準備中の上場企業向けに、その目的と基本的な確認点をご紹介します。

スキルマトリックスの作成目的

スキルマトリックスの作成は、自社の経営戦略の実現に向けて取締役会体制が適切である旨を、株主・投資家に示すことを目的としています。株主・投資家側から見ると、取締役会が十分に機能を発揮しうるかをチェックすることが可能になります。

確認点1:スキル項目が適切か

スキル項目を設定する際は、経営戦略や中長期計画はもちろん、取締役会実効性評価で抽出された課題等も確認しながら、自社にとって必要な項目を過不足なく抽出することが重要です。この際に、「上場会社経営に求められるもの」と「事業内容から求められるもの」の両面から見ると、整理が行いやすくなります。
なお、開示に際しては、抽出した項目をすべて開示するか、または、より重要性の高い項目に絞り込むかの検討も必要となります。

確認点2:スキルの保有を示す表示が適切に付されているか

開示したスキルマトリックスは、株主・投資家だけでなく、従業員、取引先、顧客等も閲覧することができます。したがって、あらゆるステークホルダーから見て、スキルの保有を示す表示(「○」等)の判断が妥当と認識されることが重要です。
妥当性を確保するためには、客観的判断を可能にするスキル項目ごとの定義と、スキルの保有を示す表示を付すための基準が必須となります。具体的には、定義と基準をもとに、各取締役が有する知識・経験等について記入し、社内で合意形成する手順となります。

まとめ

コーポレートガバナンス・コード全般において、実効性を追求し進化する企業と、形式的に対応して済ませる企業との間でその差が年々大きくなっていることが見受けられます。スキルマトリックスは、表形式というシンプルさゆえ、各企業のスタンスがはっきり表れてしまいます。形式に留まることなく、本来の目的を見据えたスキルマトリックスの作成をおすすめします。

 

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【取締役会スキルマトリックス】最新開示状況調査から読み解く作成・開示のポイント
(1)スキルマトリックス開示状況の実態(2021年11月8日)
(2)スキル項目設定の傾向(2021年11月24日)
(3)スキル項目への該当性の判定の考え方(2021年11月29日)


出所:「コーポレートガバナンス・コード 補充原則4-11①」(東京証券取引所、2021年6月11日改訂)をもとに作成

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